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哀れなるものたちのshuntaのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
純粋無垢なベラとエゴの塊な周りの人間。
そのコントラストによって価値観を問う作品。

咀嚼が楽しい作品。今こうしてレビューを書くことが
おもしろい。考えを巡らせています。

身投げした妊婦。何とその死にたての妊婦を
たまたま見つけた医者が好奇心から、胎児の
脳を取り出し、妊婦に移植して蘇らせた。
体は大人、知能は赤ちゃんという逆コナンなベラ。
言語の習得が早く、ベラは外の世界を知りたがる。
一方、医者は可愛さから家のなかにとどめておきたい。
ベラを家のなかにとどめておくにも限界が。
とうとう外の世界を知ることになる…。

世界の美しさを知る一方、醜さや不条理に気付く。
無力感にもさいなまれる。性的な喜びやお金。
現実や理想、愛と金、男と女。いろんな対立軸が
すごくメルヘンチックな可愛らしい風景と、
生々しいシーンで描かれている、とにかく対比が
すごい作品。

作中、どんどんエマ・ストーン演じるベラが成長する。
言葉や価値観、希望…知っていくんだけど、価値観や
倫理観だけはどこかぶっ壊れている。すごい血が通って
いないように思う一方、死にいく者に会いたいとも
思う。何とも言えない主人公。
一見、ベラをたぶらかす男が嫌な男なんだけど、
よく考えると一番常識的な反応で普通。
そこが皮肉的でおもしろい。わたしたちと一番
近い人が嫌な人なんて。よくできている。

一つ言えるのは、どれだけ知識として社会的に
正しい価値観を知っていても、人間が行動するとき
価値観を軽んじるときはあるし、社会的に正しくない
選択をすることもある。人間とはそういう哀れで
どうしょうもない生き物だが、その生き物が美しい
ような汚いような世界を作っていて、
初めは純粋無垢だが、その世界を構成している
1人になるのだということを突きつけている。

と、解釈している時間が楽しい。明日になったら
変わっています、たぶん…。

あと、世界観もおもしろいけど、エマ・ストーン。
すごいわぁ。本当にすごいわぁ〜。名優です。
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