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哀れなるものたちのBATIのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.0
苦手と予感しつつ「籠の中の乙女」を履修してから観てよかった。やっていることはこれをエキスパンドしたもので、私が観たランティモス作品の中で一番ストーリーが感じられる、寓話的な作品だった。

その分、理が勝った作品にはなったところはあると思うが、分かりやすいものになったと思う。冒頭の橋から身を投げるシーンからのモノクロームな「誕生後」のシークエンスと私のランティモスのイメージと違う時間が流れ、「探求」のターンになってから作品がドライヴしていくあたりから「物語」性が迸る。この辺テリー・ギリアム的。船のシーンがいかにも作り物東宝特撮的な海にさせてるのも意図的なのだと思う。

知性も教養もなく「誕生」させられたベラは経験至上主義で世界(男による狭められた箱庭的な世界)を知り、そして知性を得た所からフェミニズムに肉薄していくとは想像もしていなかった。監督の物語に全力で応えるエマ・ストーンと「父に愛されなかったが故に父のコピーとなる」息子ゴッドを完璧に体現するウィレム・デフォーが圧巻‼︎この先何が起こるのかというミステリアスさは良くも悪くも無くなるも安定感のある作品だった。

中盤のパリ辺りからメチャクチャ「時計仕掛けのオレンジ」みたいなバッキバキのショットがで出来て、自身のキューブリック信仰をコントロールしながらアウトプットしていた。キューブリック信者だけどキューブリックと違うのは前から書いてるけど、人間への眼差しがどこか暖かい所だと思う。「人間とはこんなもの」ではなく「改善できる」ものとしているけれどもそこは自分内の革命でしかないところのニヒリズム。

あと今回はスコアがイェルスキン・フェンドリックスさんと若い方なんですが、聴いたことのないような音楽で、聴いていて気持ちよかった。最初のベラがピアノに手を叩きつける所から私の中ではコードが鳴っていた。

あと、観ていて思ったけど教養と知性がないから経験至上主義になるのはしょうがないとはいえ野蛮なんだよなということで、想像力のないこと、それがpoorということを描いていた映画だったりするのかもな、と考えている。その辺と「籠の中の乙女」と繋がっているテーマで、人間の本質≠野蛮なんだよな。イコールでは決してないという。ウィレム・デフォーがゴッドを演じたから余計に寓話性が生まれたと思うし、フランケンシュタインの話としてギレルモ・デル・トロの映画に近しいところが出せた気がする。

「哀れなるものたち」、マーク・ラファロの役、ホントにどうしようもない男なんだけど、それでもちょっとかわいく見えてしまうラファロの人徳なのか身体力なのかわからんけど、その力すごい。両腕クロスさせるあるシーン、もう猫の「ごめん寝」だもん。
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