ひろゆき

哀れなるものたちのひろゆきのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

銀幕短評(#715)

「哀れなるものたち」
2023年、イギリス。2時間21分、公開中。

総合評価 78点。

「ビューティー・インサイド」(2015年、94点)というおもしろい韓国映画があります。主人公のおとこは、そのたましいや意識(まあ人格ですね)は自分のものをずっと引き継ぎながら、かれの肉体(性別、人種や老若など)は毎日毎日 不可避にうつろう。これに対して、本作のおんな主人公は、外観はもとどおりなものの あるイベントを経て 人格があたらしいものと入れ替わる。韓国映画での同一人格の彼の外観が日々変わることはまずまず慣れやすい(?)のに比べて、本作での人格の変調は、彼女(あるいはおとこに入れ替わったかもしれませんが。そもそも おんなのこころと おとこのこころと、どうちがうのでしょうか?)の人生(肉体的人生)におおきな変革をもたらす。人格と肉体のねじれ。ちょっとフランケンシュタイン的ですね。

でも彼女(かりに女としましょう)は誠実だ。じぶんのあたまで納得のいくまで ものごとを秩序立ててかんがえる。善悪と好悪を直裁(ちょくさい)に判断する。衆人環視をはねつける。慣例や因習をしりぞける。そういう いっしゅ清らかでうつくしいたましいは、外見上の破調をきたす行動とは ことなって、すくすくとのびやかに枝葉をのばす。きずつくべきところはじゅうぶん傷つき、学び、主張し、納得し、向上し、満足する。こういうロジカルなプロセスを 効率よくじぶんだけのちからで生みだす。なかなかむずかしいことです。では、つぎのチャレンジはなんでしょうか? 児(こ)を産んで いつくしむことかもしれませんよ、このひとがもし望むなら。

わたしのなかに居座っている(と思われる)人格も、すくすくと枝葉をのばしているだろうか、まいにち きょうも。


* *

この映画の監督が だれかに思い当たりました。なるほどの作風ですね、かなり好きですよ。

「籠の中の乙女」(原題:犬歯)2009年、73点。
「ロブスター」2015年、63点。
「聖なる鹿殺し」2017年、28点。こわすぎて減点しました。
「女王陛下のお気に入り」(お気に入り)2018年、未見です。
本作、78点。

の順ですね。前作「お気に入り」もエマ・ストーンの演技が好評のようです。観るのが楽しみだなあ。


(いただいたコメントに長くコメントしました。)
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