してぃぼ

哀れなるものたちのしてぃぼのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5
ヨルゴス・ランティモス監督の作品はいつも「これ!」という特定のジャンルに当てはまらない。尖った奇妙な導入なのに出口は現代にも通じる問題で、それに対する皮肉やアンチテーゼが秀逸。

今作は天才外科医ゴッドが実験的に幼児の脳みそを遺体の脳に移植して蘇らせるという設定。コミュニケーション手段の獲得→常識や礼儀の獲得→思春期的欲望の萌芽→世界の現実や資本主義の認知→自分で稼ぐ手段の獲得と最大化のための創意工夫→学問の探究という壮大な成長物語が神秘的に描かれています。

無駄がなくてかつ澱みないキレッキレワードのオンパレードでどこか舞台チックな台詞回し。おとぎ話の中に迷い込んだような世界の景色と鮮やかな色使い。そしてそんな摩訶不思議な世界観でも全く役負けしないエマストーン・ウィレムデフォー・マークラファロの怪演。予想もつかない展開とメッセージ性。音楽も初めての性に目覚めた時は明るめの音楽だったり、外の世界に踏み出した時は陽気な音楽だったり心情にマッチしていたのが良かったです。

この世で1番好きな監督はヨルゴス・ランティモス監督なんですが、今作も本当に唯一無二。現代のスタンリー・キューブリックです。また観たい作品の一つです。
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