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哀れなるものたちのcomaのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
もう、ほんとうに素晴らしい。過去のランティモス監督作品には十二分に打ちのめされてきたけれど、今作では目と耳と心が満たされる極上の味わいを得られました…
とにかく、音楽と衣装と美術だけでも。それだけでも素晴らしい。一回目はストーリーを追うのに必死だったので、2回目以降にしっかりと楽しみたいです。


上映時間があっという間に過ぎてゆく。一度は命を落としたものの天才外科医ゴドウィンの手技により蘇った、胎児の脳を持つ女性、ベラの冒険を通じた成長の物語。
単純に、社会的な成長...自立までの物語だけに留まりません。性を通じて、身体の自由にもしっかりと触れている。
執拗に繰り返される性描写。エロティックとは言い難い。生物としての営みを冷静に捉えており...その部分のおかげでこの映画は万人受けするとは言い難いのですが、性描写は必然ではないかと感じました。

「ヒステリア」という作品がありまして。「哀れなるものたち」と同じ19世紀末が舞台の英国のお話です。当時の抑圧された女性たちの抱える精神的な問題を「ヒステリー」という病だとし、それを治療するための医者が存在しました。その治療は「性的快感を与える」こと。
女性の性的な解放を目指した医者と、女性解放運動に邁進する女性とが出会うストーリー。
この時代の女性がいかに抑圧されていたか。生前のベラの生活はあまりにも酷い環境でしたが誇張されすぎているとも思えません。
ヒステリー症状の酷い女性は子宮摘出の上、施設へ収監というのは「ヒステリア」でも触れていましたし。
自殺も、堕胎も許されなかったと。
当時の女性にとって、(いつの時代にも、)
社会的な自立と、身体的な自立は等しく大切なのです。
その自由を侵害するようなやつに対する仕打ちがあまりにもランティモス!
監督の持ち味、最後に炸裂してました。
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