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日日是好日のcomaのレビュー・感想・評価

日日是好日(2018年製作の映画)
5.0
2024年の映画はじめはこの作品。
我ながら、なんていい作品をチョイスしたんだろうか…

茶道に対して無知な人間ですので、
樹木希林演じる武田先生が繰り出す“無駄の集大成”のような所作の連発にひねた笑いが込み上げてくる。
ふくさ捌きひとつとっても、
あっちに畳んでひっくり返して、ぱんと音を鳴らしてからまた折って。
面倒臭がりの私にはそんな手順を覚えるなんて拷問としか思えない。

フェリーニの「道」が示唆する、「茶道」の魅力。
なんの魅力も感じなかったはずなのに、触れればその価値が少しずつわかってくる。

理屈で考えない。とにかく形に沿うように身体を動かす。その形がとても重要。
身体に導かれるように、心が動く。その形が意味を持つ。

全編にわたって、水が伝っている。
柄杓からこぼれる水、あるいは湯。
川の流れ、うちよせる波。
親子の食卓のそうめんの鉢、喉を流れるビール。
就職、結婚、ことごとく上手くはいかないけれど次第に柔軟に生きられるようになる主人公と、どんな形にも変化できる水の存在が段々と重なって見えてくる。
親子の海のシーン。雨音が持つ、あの説得力…お見事!

意味の無いことなんて、世の中には無いのかもしれない。無意味だと判断する自分の価値観の浅さを恥じるべきなのかもしれない。
私たちのからだのほとんどは水なのだから、どんな形に変わる可能性をも秘めている。そんなことを思った。

一年に一度は見るべき傑作。
背筋が伸びてくる、新年を迎えた夜の3時でした。
これだから映画はやめられない…
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