来夢

哀れなるものたちの来夢のレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
ここ10年でNo.1かも。これは凄い。原作ものだけど、ほんとに?ってくらいランティモス色強くて、「籠の中の乙女」や「ロブスター」をそのまま拡張したような感じすらあるね。人間と動物の違いの証明。社会性の中で自由を制限して生きるのが人間らしく、本能に忠実に欲に抗わず生きるのが動物なのか。人間らしく社会性を持って生きるのが正しいのであれば、社会性の中でしか生じ得ない差別や偏見さえも正しさと言える。社会性の欠如したベラにはその差別や偏見はない。ソシオパス的正義のヒロインの誕生は差別を嫌う観客たちを興奮に導くけれど、社外性の中でお行儀よくしか生きられない我々が、差別はいけません。と、その理由もよくわからず叫んでいることに哀れさを感じるべきだよね。ベラは差別はいけませんなんて思ってもいない。ただ差別をすることを知らないだけだ。差別はいけませんっていう差別は、この社会の中で生きている以上は無くすことは出来ない。差別という概念そのものを消失させるしかない。ではそのように社会性から脱却して生きれば良いのか。そうして自分の正しいと思うままに正義も悪もなく生きるのがいいのか。それではただのソシオパスかサイコパスだ。それが嫌ならもう、神にでもなるか、ロブスターにでもなるしかないよね。果たしてベラは何者になったんだろう。
100本のポリコレ映画を観るより観る価値ある1本だと思います。
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