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猫たちのアパートメントのkunicoのレビュー・感想・評価

猫たちのアパートメント(2022年製作の映画)
3.5
動物に対して自分の行動に責任を持つこと、について凄く考えてしまった。
地域猫って、要するにその子に対して誰も責任を持っていないことだとも言える。
その一生を担おうとする覚悟が足りないというか。
ただ、猫たちも「ペット」になりたいわけではない、というのも狭い部屋に閉じ込められてひたすら窓の近くで鳴く女の子を見て思った。

イスタンブールのような、猫のいる風景がもはや観光資源になっていて、過疎化しない場所を作れていることって奇跡に近いことなのかもしれないな〜と思いながら見ていた。
老朽化し人がいなくなった団地、みんなで餌をあげ愛情を注いでいるので猫たちは丸々と太っており広大な敷地で自由きままに“野生”を謳歌している。
この風景を、ではどうすれば崩さず守ることができたのか。
守ろうとしたとは思う、けど守れなかった、だから見殺しにするよりはよっぽどマシだと立ち上がる人がいた。
そんな人たちが「何が正解か分からない」「猫の幸せとは」と悩む姿、餌やりおばさん通称“猫ママ”たちが不憫だと思い高い餌を買い与える様子、そしてそれを「これから野生に放たれる猫たちにとっては逆効果」と冷静に口にするカメラマンの男性。
どの人間の言葉も苦悩も理解できた。

誰もが責任も覚悟も持つことなく崩壊した現実には、社会が手を貸すべき。
そしてその社会とは、即ち自分でありあなたである。
猫だけで無く、鳥が消え、木々が消え、まるで空爆でも受けたかのように丸裸にされた敷地を映すラストにそう教えられた気がする。
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