ふぇりな

哀れなるものたちのふぇりなのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

まずはじめに、私はヨルゴス・ランティモス監督を敬愛しています。彼の作品はいずれも素晴らしいと思っていますし、新しい作品が出るとなったら楽しみでウキウキしてきて夜も寝たくなくなりそうな勢いです。本作も大変に楽しみにしておりました。期待度から言いますと間違いなく今年ナンバーワンです。好きになれませんでした。いえ、部分的には好きでしたが、ハッキリ「この作品を愛している!!最高!!」と感じることは最初から最後までありませんでした。悔しくてたまりません。ある種の裏切りを感じます。彼ならば絶対やってくれるだろう、などというのは思い上がりにすぎませんでした。残念でなりません。彼ならもっと素晴らしい作品を作れるのに、この作品がそうではなかったのが口惜しいです。愛しさ余って憎さ百倍、とはこのことでしょうか。これから先の人生、私好みの作品で満足させてくれるまで、追い続けてやるからな…。

…とまあ、気持ちの悪い本音はさておき、事実物足りなさしかなかったです。理由をあげればもはやキリがないような気がするので端的にまとめると、①いくらなんでも多すぎる性描写と、②世界のこと全然知ってないじゃん…地中海界隈だけで知った気になるな…③エグさが足りないの3点が特に気になりました。①は結局喜ぶのは男性な気がしますし、性ってそんなにも人間にとって欠かせないものでしょうか??まあ、ベラにとっては、だったのでしょうけれども…。避けては通れない問題(妊娠や性病の危険)もほぼスルーだったのも不自然でした。②についても、結局ヨーロッパ中心主義だし、程遠い「世界」のことなんて考えてもないのね…という気持ちになりました。アジア人としては悲しいですね。③はまあ私の好みではありますが、ヨルゴス・ランティモスらしからぬ(度を越した)綺麗さというか、全体的にぬるくてもっと生々しさがほしかったです、性描写以外の。手遅れ感や行き詰まり感がなくある意味ストレスフリー(!?)な気がしました。

とはいえ、テーマや設定や世界観、衣装、ヨルゴス・ランティモスらしい演出、何よりラストシーン、はとっても好きでした。俳優陣の演技も素晴らしく、特にエマ・ストーンはやはり好きです。これからもずっと好きだと思います、大好きです!!
これまでの言葉と合ってないと思われそうですが、好きだからこその苦々しさと愛ゆえの罵倒です。ある意味、この作品の人物たちと同じで、哀れなのかもしれませんね。人間って哀れだ…(結局オチはこれ)。
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