タイレンジャー

ブラインドネスのタイレンジャーのレビュー・感想・評価

ブラインドネス(2008年製作の映画)
3.0
犬や猫って去勢すると、食欲が増進するんですって。

一つの機能が失われると、ぜんぜん関係ない欲望の増進に作用するって面白いですね。

そんなことをボンヤリと考えさせられたのが本作です。

ある日突然、視力が失われるという奇病が世界中に蔓延した世界を描く映画なのですが、視力が失われた人間(というかオトコ)たちの食欲、支配欲、金銭欲、性欲が増大してエライことになります。

視力を無くした人々が感染拡大防止のために、隔離施設に連れて行かれますけど、これが隔離施設とは名ばかりのブタ箱。職員は食事を持ってきてくれるくらいで、他は何もしてくれない!

診察も治療も無ければ清掃もしてくれないんですね(少なくともそういう描写は無いし、施設の床は排泄物だらけ・・・)。

てなわけで、隔離されているのに、中は全く管理されていないという地獄絵図が展開されます。まるでジョン・カーペンターの『ニューヨーク1997』のように隔離された無法地帯での弱肉強食の世界を見せつけられます。

一部のオトコたちは軍事力(誰かが拳銃を持ち込んだ)にモノを言わせて、このブタ箱の中を支配しようとします。食料はほぼ独占し、金品と食料の交換、果ては食料とオンナの交換までも強いる暴君っぷりを発揮します。

視力が失われた結果、人間(何度も言うけど主にオトコ)の野蛮な本性がドバーッと出てしまうんですわな。人間なんて極限状態になれば、文明的とは言い難い野蛮な生き物なんだよなぁと思わされます。

隔離と言う名の檻に閉じ込められた獣たちはやがて共喰いすることになる、なんていう見方もできます。

そう、獣と化す人間たちの醜態を眺めるのが楽しい映画です。