きゃんちょめ

チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室のきゃんちょめのレビュー・感想・評価

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1.【イライラするのはイライラする理由が不明確だから】
「それでは一体、娘さんはなにを悩んでいるのでしょうか?あなたは単純に「男友達がいないからだ」と思い込んでいらっしゃるかもしれませんが、若い頃の「思い通りにならなくてイライラする」は、そんなにすっきりした単純なものではありません。若い頃の最大のイライラは、「自分がなんでこんなにイライラしているのかが、自分でもよく分からない」というところにあるのです。」(橋本治著『橋本治のかけこみ人生相談』86頁)

2.【幸せとは何も考えなくていいと思えることである】
「あなたの生活圏がどこで、どこにお住まいかは存じませんが、あなたがディズニーランドやディズニーシーの中に住んでいるのでもなかったら、《幸せそうな人》というのはそうそう簡単に見ることは出来ません。世の中の人は生活が結構大変で、そうそう《幸せそう》にはなれないはずで、《幸せそうな人》がいたら、その人はその瞬間バカになっているのです。「幸せそうな人間はみんなバカだ」なんてことを言ってしまうと、とんでもない悪口のように聞こえるかもしれませんが、「バカ」になっていられる時、人は幸福感を味わっているものなのです。「バカになっていられる」ということは、「余分な心配をなにもしなくてすんでいる」という状態にあることなのです。「ああ、なんにも考えなくていいんだ!」と思ったら、幸福でしょ? もしかしたらあなたは、そんな風に考えたことがないので「そんなバカな」とお思いかもしれませんが、実は「バカ」になれた時、人は幸福なのです。誰彼かまわず抱きついてゲラゲラ笑っている酔っ払いのことを考えて下さい。周りの人間は別として、それをやっている酔っ払いは幸福で、人は「幸福でいられるバカ」になりたくて、酒も飲むのです。だから、あなたが《幸せそうな人》と思う人達は、みんな「バカ」なのです。」(橋本治著『橋本治のかけこみ人生相談』119頁)

3.【お金を返して欲しいならばお金を貸すな】
「「ある時払いの催促なし」という言葉をご存じでしょうか?これは信頼出来る相手に金を貸す時によく使われる言葉で、「貸してやるけど、返すのはいつでもいいよ。催促はしないから、お金が返せるようになったら返して」という意味です。「利子を取る」という話はこのどこにもありません。親しい他人にお金を貸すということは、実はこんなことなんですね。お金を借りる側になって考えてみれば分かるのですが、「お金を返す」というのは結構大変です。生活がギリギリだからお金を借りる必要が生まれる。一時お金を借りてその場を乗り切ったけれども、そのお金を借りたことによって、ギリギリの生活の中からその返済分をひねり出す必要も生まれてしまうのです。「月々ちょっとずつ」という形でも、しんどいと言えばしんどいです。「お金を借りる」というのは、それだけ困っているということで、その上にまた「お金を返す」という苦労が加わってしまう。だから、親しい人や心の許せる人に「お金を貸して」と言われたら、その先の「返す時の大変さ」も頭に入れて「ある時払いの催促なしだから」なんてことを、昔は、言う人は言ったもんです。それを言うということは、当然「貸した金は返って来ないかもしれない」と想定するのと同じです。だから、人にお金を貸すということは、「この金は返って来ないかもしれない」という覚悟をすることなのです。人にお金を貸す時に考えるべきことは、「この相手は借りたお金を返すか、返さないか?」という判断をすることと、もう一つ「この相手に貸した金が返って来なくても平気かどうか?」という判断をすることです。その二つの観点から見て「だめだな」と思ったら、「悪いけど貸せない」とはっきり言うのです。」(橋本治著『橋本治のかけこみ人生相談』211-213頁)

4.【力がなければその力への反発力である現実もない】
「はっきり言って、十五歳の中学生に現実なんて、まだありっこない。"現実"っていうのはね、その中で生きようとするものを傷つけようとする力のことなんだね。中学生にそんなものがある訳はない。」(橋本治著『青空人生相談所』27頁)

5.【意味は人と人の関係の中で生い茂る】
「僕だったら、誰が自分のことを変態だと思おうと、"その人"が自分のことを変態だと思いさえしなければ一向に構わない。それは普通のことで、それとは関係のない人間が何を言おうと関係がない。"意味"というのはそういう力関係のことだからね。」(橋本治著『青空人生相談所』28頁)

6.【生きることは現実をマシな方に変えること】
「現実を自分にとってましな方に変えていくことが"生きる"っていうことなんだね。」(橋本治著『青空人生相談所』29頁)

7.【使っている限りは使えるのが身体】
「人間の体というものは、使っている間はいつまでも使えるものです。でも、同時に、人間の体というものは、使わなければ腐って行くだけのものです。」(橋本治著『青空人生相談所』45頁)

8.【逃げたところから再開せよ】
「何やったって壁にぶち当たるだけだよ。だから君は、学校に帰らなくっちゃいけないんだ。君が最初に逃げて来たのはそこなんだから。」(橋本治著『青空人生相談所』48頁)

9.【思想書はどうやったら読めるのか】
「まず第一に、『現代思想』とかに興味を持つのをやめなさい。「完全にキョーミなんかないや」というところまで行きなさい。そうなって、「昔自分が憧がれを持ってたものはなんだったのかなァ」と思って改めて『現代思想』とかを読みなさい。そうすりゃ難なくそれを読みこなすことができます。「あ、こういうことが書いてあったのかァ」という理解が簡単にその時に出来るようになります。何故ならば、その時のあなたと『現代思想』とかの間には"関係ないやァ"という距離感がありまして、その距離感のことを難しい言葉でいうと"客観性がある"ということになるのです。」(橋本治著『青空人生相談所』53頁)

10.【思想は現代でしか使えない思想になってはならない】
「今の現代思想にはロクなものない。現代思想になっちゃうのが現代の思想のダメなところだってところまで、既に世の中は進んでいるのです。」(橋本治著『青空人生相談所』53頁)

11.【援助を求めてくるのは受動的な態度ではない】
「「助けて」と人に言うのも、実は積極性の表れなんですね。実を言えば、あなたの弟さんは、「助けて」とさえも言わないでしょう?言わないんだったら、当面はまだ助ける必要なんてないんですよ。放っときなさい。」(橋本治著『青空人生相談所』59頁)

12.【超常現象をも論理の中に組み込むのが現実主義】
「ところで私は、そういう超常現象の類に遭遇したことがありません。ありませんからそういう現象の存在を否定するのかというとそうではありません。私の友達でやはりそういう体験をよくするという人間がおりまして、そういう人間の話を聞くと私はどう反応するのかといいますと、「いいなァ、繊細で、俺そういうのって全然経験ないんだよねェ」ということになります。冗談ではなくして、私は、鈍感だからそういう目に遭ったことはないのだと、そう思っております。そしてです、そういう自分のことを私がどう思っているのかというと、「とことん現実主義者だからなァ、俺は」という風に思っております。ここで誤解なさってもらいたくないというのは、私は、そういう超常現象を切り捨ててしまう現実主義者ではなくして、そういう超常現象をも論理の中に含み込んでしまう現実主義者だからであります。」(橋本治著『青空人生相談所』146-147頁)

13.【呪殺は可能である】
「たとえばブードゥー教などで人を呪殺するというようなことが本当に可能であるということは十分にありうることですが、どうしてそれが可能になるのかというと、"その宗教による呪殺は可能である"という共同幻想が成立している"場"というものがその前提としてあるからですね。」(橋本治著『青空人生相談所』149頁)

14.【金持ちのアナキストはモテる】
「坊ちゃん育ちで我儘で、そしてアナーキーなところのある男というのはモテることになってます。」(橋本治著『青空人生相談所』165頁)

15.【人生は逆転のためにある】
「あなたは、人生に当りはずれがある、などということを考えたこともございますまい。ございますまいが、しかし現実には、そういうこともあるのです。ええ、人生には当りはずれがございます。そして、その人生とは、そのはずれくじを引いてしまった人間が、そのことを結果としてひっくり返してしまう為にあるのです。別にあなたはこのことを聞かなくともよろしい。私は別にあなたに向かってこのことを言っているのではないのだから。私は、このことを、運悪く、奇形児として生まれてしまった場合の、あなたのお子さんに向かって言っているだけなのだから。」(橋本治著『青空人生相談所』181頁)

16.【オナニーをやめられないのはオナニーが悪いことではないと知っているから】
「人間はさもしいもので、いいこと悪いことがごっちゃになっている時は、分かっているけど、その悪いことはやめられません。よくないよくないと分かっていても、オナニーをやめた青少年の話を聞いたことがないというのは、そういうことでしょうね。」(橋本治著『青空人生相談所』186頁)

17.【自殺できないのは死にたくないから】
「人間、折角自然に生きているものを無理矢理に死ぬのです。自然の方向をねじまげる為には、実に大変な努力がいります。自殺者がキチンと自殺できるというのは、実はそこまで思いつめているからです。思いつめた挙句の過剰な集中力が、その無理矢理の死を可能にするのです。本当に"死ぬ気"があれば、途中でバルコニーがあるようなビルを選びません。紐の強さだってガス会社の都合だって、睡眠薬の致死量だって、間違えることはありません。そういう冷静さがあなたに欠けているということは、あなたに死ぬ気がないからです。」(橋本治著『青空人生相談所』247頁)
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