たく

私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?のたくのレビュー・感想・評価

3.7
企業の利権絡みの大量解雇に反旗を翻した労組代表の女性が、襲撃事件の被害者から加害者に仕立て上げられて行くという事実を基にした話で、淡々と進む硬派な作りが却って事の不気味さを浮き彫りにしてた。彼女が長い年月をかけてある結果を掴むんだけど、最後モヤモヤした。今年70歳のイザベル・ユペールが白塗りの厚化粧で頑張ってたのが微妙。それでもこの人はいつまで経っても若くて驚いちゃうね。

東日本大震災によって原子力発電に対する信用が失墜したフランスで、国内に原子力発電所を建築できなくなった大手のアレバ社が中国と事業提携して国内の労働者を大量解雇しようとする。そこに原子力業界の労組代表のモーリーンが解雇を阻止しようとアレバ社の元社長や政治家などを巻き込んで活動する中で、彼女を排除しようとするアレバ社の新社長を始めとした利権を死守しようとする勢力と対立して行く展開。

モーリーンがレイプ被害に遭う冒頭シーンに戻ってから事件の捜査に入って行くんだけど、警察が最初からモーリーンの自作自演を疑ってかかるのが酷い。彼女が襲撃された時に腹にナイフでAの文字を掘られるのは「緋文字」のA(Adultery、姦通)かと思ったけど、劇中ではアレバ社のAだと説明されてた。被害者だったはずの彼女の証言に矛盾があることを指摘され、まさか容疑者に仕立て上げられて行くのが、裏で不気味な勢力が動いてるように思えて怖い展開。

モーリーンが劇中でほとんど感情を表さなくて、彼女が本当の被害者なのか観てる方も分からなくなってくる。このあたりは「バニーレークは行方不明」的な感じだったね。捜査に疑問を持ってた警察署員の情報提供でようやく希望の光が指すも、結局事件の犯人は分からずじまい。企業の陰謀かどうかも闇の中というモヤモヤする結末だった。
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