サーモンピンクのシャギーカーペットを歩くペディキュアしたての足、つけまつげ、そしてブルーのサテンに浮かぶタイトル…。まるでソフィア・コッポラ製の烙印を押すかのように開始数秒から始まるガーリーなディテールの応酬…。これだけで間違いない映画だと確信しました。
エルヴィスがいかに暴君で毒夫だったのかを暴露する内容なのかと思ったらそんなこともなく。短気で沸点が分からない危うさはあるけど、プリシラだけが知るアーティストとしての葛藤や精神世界に傾倒する様など人間性が掘り下げられていて面白かった。身内から見るスターの肖像って興味深いなと思った。
勝手にもっと冷ややかに描くものだと思っていた2人の馴れ初めもやはりソフィアに描かせるとここまでポップで爽やかになるのか。ケイリー・スピーニーの少女漫画みたいな表情が可愛くてたまらない…。『マリー・アントワネット』の時のキルスティン・ダンストを思い出しました。相手がどんなスーパースターでも14歳で初恋ならあんな感じよね。
そして主演2人のケミストリーにびっくりした！お互いにベッドでポラロイド撮るシーンとかミュージックビデオかよってなったけど。
一番衝撃的だったのはプリシラが出産前につけまつげをつけるところ。子供から大人の女性になる大事な時期をスーパースターの恋人・妻として生きた彼女が、月並みな表現だけど「自分の人生を生きる」という決断を下したこと。純粋な愛への憧れからエルヴィスの理想通りの人形になり、孤独に怯えていた少女の真の成長と解放には胸が清々しくなりました。
音楽もいわずもがな最高だったけど思ったよりフェニックス要素が少なかったので鑑賞後に自分で補填しました。
