軍事の天才ナポレオンと幼く屈折したナポレオンの両面を描いた作品。どちらをより強く押し出したかと言えば、後者の方かもしれない。
ナポレオンに対する評価はさまざまだが、彼がフランス革命末期に現れなければ確実にフランス革命という動きは潰されていたし、国民国家の誕生はなかったもしれない。
エンドロール前に挙げられたナポレオンの主な戦績におけるフランス軍の死者数をどう解釈するか？ナイーブに見れば、恐怖政治を行ったロベスピエールよりもナポレオンの方が圧倒的に多くの国民を死なせたとなるかもしれない。しかしより対局的に見れば、フランス国家のために身を捧げても良いと思える国民を軍隊として動員できるだけの力をフランス革命の精神は生み出したとも言える。これが、のちの第一次・第二次世界大戦における総力戦につながる。その事実を踏まえると、もっと多様な見方が生まれるように思う。
ジョゼフィーヌとナポレオンの屈折した関係は、ひとえにナポレオンの幼さが際立つような見え方となっている。歴史上、英雄と呼ばれる人物が人格的にも優れていたかと言えばそんなことはなく、極々一般的な痴話喧嘩もするし、感情に任せて無茶振りをしたりもする。逆に言えば、それ以上のことはこの描き方からは読み取れなかった。
※1.フランス革命史の基礎知識はあった方がよい。無くても楽しめるだろうが意味を見出すのが難しくなると思う。
※2. できればフランス語でやって欲しかった。ナポレオンのフランス語は、イタリア語訛りであったらしく貴族からは笑われていた。人間ナポレオンを描くなら言語への拘りは必要な要素だったと思う。
