りょう

市子のりょうのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
4.1
この作品も早く観たかったので、アマプラで配信してくれてありがたい✨なかなかネタバレせずに語ることが難しい作品ですが、チャレンジしてみます。

容赦ないのラスト、主人公である市子の分からなさ。オープニングの波が終盤になって意味がわかってくる。

市子の生きることへの執念っていうのはどういうところから来るのかな、と考えてしまった。生まれながらにして抱えていた問題で自分の存在意義が認められない、認めてもらうことへの渇望なのか。市子が序盤に長谷川とシチューを食べながら、今が幸せと語るが、市子は人とつながることに飢えている。市子が花火が好きな理由が悲しかった。みんな上を向くからって。市子が黒のワンピースを着ているのも目立たないようにとか、そういう理由があるのかな。

母・なつみが市子に「ありがとね」というシーン。ここはかなり複雑な気持ちになった。市子がやったことがいいことなわけがない。でもそうせざるを得なかったのもある。

ケーキが好き、縁日の焼きそばが好き、かわいい浴衣を着てみたい。そんな普通の女の子が思う何気ない幸せ。それを許さない日本社会のアホらしいルール。

一見、市子が恵まれない環境に置かれていることを哀れむ感情になるが、ある意味逞しい市子の選択に、なんとも言えない後味を残す作品でした。

とにかく、この作品は杉咲花である。杉咲花を初めてみたのは湊かなえ原作のドラマ「夜行観覧車」な気がする(回鍋肉のCMとどっちが先かな)。こんなに素晴らしい俳優さんになりました!そういえば「湯を沸かすほどの熱い愛」の時も良かったな。

それと森永悠希さんも良かったですね。特に市子の理解者っていういい人キャラなのかと思いきや、どんどんエスカレートしていく役で、しっかり気持ち悪かったです。

そして、なつみ役の中村ゆりさん。きれいなのに幸薄い役がやっぱり似合う。船で出発する長谷川に深々とお辞儀するシーンは色んな思いが込められているように感じた。

それとここにも渡辺大知。至る所で見ますね。市子と争うシーンは結構見応えありました。

童謡「にじ」を聴くたびにこの映画を思い出してしまいそうである。
りょう

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