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ぼくを葬る(おくる)のemilyのレビュー・感想・評価

ぼくを葬る(おくる)(2005年製作の映画)
4.0
余命3か月の宣告を受けたパリで一線で活躍するファッション・フォトグラファーのラモン。その3か月どう過ごすか考える。家族に告知したかったが、なかなかできず八つ当たりしてしまう結果に。パートナーの青年サシャには冷たい態度を別れを告げてしまう。祖母にだけ、本当のことを話すことができた。ある日カフェで再会した女性から、夫が不妊症なので、手伝ってほしいとお願いされる。ゲイの彼からしたら女性とのセックスは考えられないことだが・・・

家族とは一番近い存在、だからなかなか素直になることができない。それでも彼なりになんとか寄り添い、愛してる事を伝える。そうして大好きな人たちの笑顔を写真に収め、記録していく。

しかしそれが何になる?

それが何になる?と思えるようなことが、死を宣告されると大事に思えてくる。当たり前のことが当たり前に感じなくなる。日々がありがたく思え、一つ一つがいとおしく思えてくる。

彼の生きた証は・・?

同性愛者でことどもを持つことはできないと思えた彼に
舞い込んできた話。彼は自分の生きた証として子供という生を
つなぐ手伝いをすることにした。

彼がやったことはそれだけ。
家族や誰かに寄り添ってもらう訳ではない。
一人で死んでいくことを選んだ。
でも意外とそんなものかもしれない。
家庭をもっていたら別かもしれないが、自分が死んでからも悲しい思いをさすのだ。せめて死ぬまではそんな思いさせたくない。だって僕は今生きてるんだから。
ちゃんと息してるんだから。
死と向き合うことは生と向き合うこと。
自分の生きてきた人生を見つめ直し、幸せだった日々。
愛ににあふれてた日々を思う。
そうして息途絶えるその瞬間の1秒前のロマンの笑顔が
一番生きてる顔をしていた。
死ぬ直前に一番生きていた。
満足した、悔いのない顔をしていた。

美しい夕日が沈んでいき、沈む瞬間まで輝いていた。
とても静かな死だ。でも実際はこんなもんだと思う。
誰かと楽しい日々を過ごしても、あとに残る人には
その楽しい時間を過ごした分の何倍もの悲しみが残ってしまう。私も同じ選択をするような気がする。
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