Omake

僕はキャプテンのOmakeのレビュー・感想・評価

僕はキャプテン(2023年製作の映画)
4.5
ヨーロッパに住んでいると様々な国にルーツをもつ人々、文化や言語や宗教の違いを身近に感じるようになる。それもこれも人が移動してくるからだ。私もそんな移民の一人で、イタリアに住み着いてから長くなる。

インターネットで、世界の情報にほぼ境がなくなり、物やお金が行き来している時代でも、未だ国家の枠組みはしっかりとある。

国家という枠組みに最も縛られるのが人の移動だ。移動に制限があるという事は、それをビジネスにしたり、利用したりする人も出てくるということだ。

イタリアでは地中海の海上が穏やかになる春から秋にかけて、アフリカから漁船に乗ってやってくる難民のニュースが流れてくる。

アフリカ北部沿岸の町からは船で一昼夜の距離であるため、船に積載量ギリギリにまで人を乗せてやってくるオンボロ漁船がひきもきらない。

地中海は内海に島々が点在し、古代から海上交通が盛んな地域だ。イタリアの最南端はランペドゥーザ島でここには島の人口を超える程の難民が毎年流れ着く。財政的にも人手的にも既にとっくにキャパシティをオーバーしているのでなんとかしなければいけないのだが根本的な解決策はない。つい先日もイタリア首相が欧州委員会委員長のフォン・デア・ライエン氏を島に招いて視察をしたことがニュースとなっていた。

陸続きであれば壁を巡らせれば国境管理ができるかもしれないが、海ではそうはいかない。海上で遭難した人がいた場合、近くの船には人命を救助する義務が生じるのだ。特にイタリアはカトリックの国でもあるため人道的見地から人命救助を優先する考えが支配的だ。この辺りは欧州国間でも温度差はある。
いずれにしても今までヨーロッパ側の事情でしか物事を見ていなかった。


前置きが長くなりましたが、この作品は、16才のセネガル人少年の視点から語られるヨーロッパを目指す旅の物語です。

なぜヨーロッパに向かうのか、どんな生活があり、何を夢見ているのか、そして実際の旅はどうなのか。

実話というわけではないけれど、多くのアフリカ人が辿った旅の様子を元にしているので、ここで描かれている事は実際に起こっていることに近いと思われます。

中には酷い話や恐ろしい表現も多々ありますが、作者のマッテオ・ガローネが語ったように、ホメロス的なお伽話、という事で、様々な障害に見舞われながらの冒険譚になっています。

見終わった時には、彼らと一緒に困難な旅を終えたような気持ちになります。




もちろん、その先のことはまた別の話になるわけですが。。ともあれ、少年に幸あれ
Omake

Omake