キャプテン

ぼくは君たちを憎まないことにしたのキャプテンのレビュー・感想・評価

3.7
ある日パリで起きたテロで突然妻を失い、悲しみや怒りやいろんな感情が起こる中、まだ1歳半の息子は何も理解できないまま、普段通り本の読み聞かせを求めたり、そばにあるもので遊んだり、そしてママを連呼する。

そうした普段通りの生活を送らなくちゃいけない決意のようであり、そう思わないと精神が保てない自己防衛や願望の意味も込めて、『ぼくは君たちを憎まず、普通の生活をして息子をしっかり育てる。何も変わらないことで君たちに勝利する』といったような、テロの犯人たちにあてた手紙のような投稿をfacebookにする。

すると、この投稿が世界中で20万回以上シェアされ、一晩で主人公は有名人になってしまう。

TV出演や雑誌のインタビューに答えながら、自分の想像を超える反響に戸惑っていく。
やはり簡単に怒りや恨みを消す事も出来ないが、それでも世界中からは凄い人格者で英雄の評価をされることにも葛藤し、妻の葬儀への準備にも心が追いつかず、普段通りの生活を求め続ける息子にもイライラしてしまう。



シングルファザーの話は、特に家庭環境や思い入れがあるわけでもないのに、なぜか気になって観てしまう。
以前見た『いつかの君にもわかること』でも子役の演技が素晴らしいと感動したけれど、今回も凄い。
『いつかの君にもわかること』の息子は4歳だったけれど、今作は1歳半の設定で、演じてるのは当時3歳の子、しかも男の子ではなく女の子。

凄すぎる。


場面を理解し、その場面にあった感情を表現している。
セリフだけでなく、納得できないイライラの表情や、怒られたことによる恐怖の表情や涙。

とんでもない子役だったから、成長しても役者をやって欲しい。




愛する妻を突然失い、まだ妻の生活の残り香みたいなものが、洗濯前の服や、ヘアブラシについた髪の毛、タバコの吸い殻といった形で、あらゆるところに残っていて、本当にちょっと前までそこに確かに居たはずなのにという、受け入れられない様子が細かく表現されてる。


一緒にテロに巻き込まれた友人は生き残って、その友人となかなか会う決意ができない葛藤とか、本当に細かい感情の描写が素晴らしい作品。