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シェアの法則のばんのレビュー・感想・評価

シェアの法則(2022年製作の映画)
4.5
チューリップの花言葉は「思いやり」

Tulpen Haus チューリップの家という名前のシェアハウスの人間模様を描いた笑いと涙、しんみりしつつも、鑑賞後、胸がじんわり暖かくなる一作。

主人公はシェアハウスの大家の夫、税理士で外面はいいけれど、亭主関白で頑固な昭和の堅物春山秀夫を俳優人生初主演!の名バイプレーヤーの小野武彦が演じる。

私にとっての小野さんは「青島く〜ん」と呼ぶ踊る大捜査線の袴田課長のイメージが強いのだけれど、堅物で、カチコチに固まった価値観が、訳アリのシェアハウスの住人との事件を通じて、柔らかくあったかくなる様子が、セリフだけではなく、表情や背中で表現されていて、素晴らしかった。

そして、大家の宮崎美子の明るく、あったかい「住人みんなのお母さん」ぶりがとてもよかった。あんなシェアハウス、ほんとにあったら、住みたい。

貫地谷しほりの、一回りも年をサバ読み、DV夫と借金取りから逃げる昼は事務職、夜はキャバ嬢のやさぐれっぷりもよかった。

全ての所有物に名前をつけて、冷蔵庫のプリンを食べられて激怒する外資系企業にお勤めのアラフォー独身女性加奈子。脚本を書き、主題歌の作詞もやってしまった、餃子の街が生んだ異才、岩瀬顕子が演じた。いや〜、エイジズム全開でジェンダーバイアスかかりまくりの出入りのハウスクリーニングの人に啖呵を切る姿。カッコ良かった〜。

同郷のU字工事が、

いや〜アッコちゃん。たまげたよ。かっこいかったなぁ〜。男がでれすけ(馬鹿野郎)で ごめんねごめんね〜

とのたまうに違いない。

元々は劇団青年座の舞台のために書き下ろされた脚本を映画化。LGBTQ、外国人の不法労働、DV、貧困、引きこもり、熟年離婚等、文字に起こすだけで悲しくなるたくさんの社会問題が詰まっている話なのだが、ハートフルにまとめあげ、今回もたくさん笑って泣かせていただきました!

岩瀬氏は劇団日穏を主宰。何本か舞台映像、舞台を見たが、どれも笑いあり涙ありの心暖まる話だった。コロナと戦禍で分断の社会となってしまった今だからこそ、チューリップの花のように、

♫ならんだ〜ならんだ〜あか、しろ、きいろ。

と色とりどりな多様性を尊重するこの話を、一人でも多くの人にシェアしたい。
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