yumeayu

デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章のyumeayuのレビュー・感想・評価

4.5
"私にとって、おんたんは「絶対」なんです"

浅野いにおによるディストピア群像劇。
単行本最終巻の帯に"アニメ化決定!"と書かれていから、ずっと音沙汰がないなのでボツったのかと思っていたら、遂に満を持しての映画化!

正直、原作ファンとしては、あの世界観をどこまでアニメ化できるのか不安もあったけど、蓋を開けてみれば大満足の出来栄え。制作に浅野いにおも参加しており、何度もリテイクを重ねてきたという本作。原作ファンはもちろん、映画で初めてデデデデに触れる人も楽しめる作品となっていました。

まず驚かされたのは、スクリーンに描かれる圧倒的な情報量。セリフもほぼ原作に忠実で、メインキャラのみならず、モブキャラや街並み、建物、背景など、この辺りも原作の雰囲気を損なわず見事に再現されていました。

また、映画化にあたり最も重要だと思っていたのは、主人公の門出とおんたんのキャスティング。起用されたのは今をときめく、幾田りらとあのちゃん。いわゆる客寄せのタレント起用だったら嫌だなと感じたが、実際の演技は2人ともキャラクターにマッチしていて、違和感など全く感じず。幾田りらは本職の声優かと思えるほど素晴らしかったし、あのちゃんも個性が強すぎるおんたんを見事に演じていました。

非日常を生きる少女達の日常を描いた本作。
突如出現した巨大UFOが東京を覆っているという非現実的な世界を描いているが、3.11東日本大震災やコロナを経験した我々にとって、どこか絵空事とはいえない現実感がある。
日本が終わるかもしれない危機が訪れても、それでも日常生活は続き、人々は自分自身の周りのことで精一杯。所々で被害があったり、犠牲者も出ているのだけど、どこか他人事のような空気感がめちゃくちゃリアル。
本当にヤバいことは、知らず知らずのうちに広がっていくことを僕らは体験しているはずだし、世界では今もなお戦争が起こっているのに、結局またこうして平和ボケしちゃってるんだよなぁと、本作を見て改めて実感させられました。

前章となる本作。物語としては、原作の3巻ぐらいまでの話となっていましたが、後半の回想シーンは原作でも中盤以降に描かれていたので、映画化にあたり、多少の改変はある模様。
実際、前章では全12巻の1/4程度しか描かれていないと考えると、後章はどのような展開になるのか気になるところ。思い切って原作とは違った結末になったりするのでしょうか!?

あと個人的に楽しみだったのは、コミックスだと毎巻、巻頭と巻末に描かれていた『イソベやん』の表現方法。
これも見事に再現されていましたね。しかもデベ子を演じていたのがTARAKOだとは…。
『イソベやん』は『ドラえもん』のオマージュなのだが、それを『ちびまる子ちゃん』のTARAKOに演じさせるというセンス。
「永遠に終わらない国民的日常系アニメの融合だ!」と思わず興奮してしまいました。

前章の完成度の高さから、否応なく後章も期待が高まるばかり。物語の総評としては後章の結末によるかなと。
レビューを見渡すと割と原作未読の方が多い印象なので、そのまま原作の情報なしで見た方が楽しめると思います。
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