"人は見たいものしか見ない"
劇中で広瀬すず演じる更紗が口にするセリフが、本作の核心をついている。
雨に濡れ一人で佇む10歳の少女の更紗を自宅に連れて帰った19歳の文。更紗は2カ月間、文の部屋で過ごしていたが、やがて文は更紗を誘拐した罪で逮捕されてしまう。
世間から見れば二人は誘拐犯と被害者なのだが、実情は異なり、心に傷を負ったもの同士、お互いに生きるうえでかけがえのない存在として支え合っていただけ。
しかし、一般的な考え方をすれば、多くの人はそのような事情は信じないだろう。
更紗は被害にあったかわいそうな子供として、文は少女を監禁したロリコンとして、レッテルを貼られてしまう。
本作で語られる物語は、一筋縄ではいかない非常に難しい問題を描いている。
確かに物語として、更紗と文の視点に立って見ているので、世間の方が理解がなく、2人の関係性の方が純粋で正しく思えてしまう。
しかし、現実に子供と大人が2人で暮らしていて、「性的な関係は一切なく、傷付いたもの同士支え合っていただけです」と言われて、「そうか、それなら仕方ない」って、理解を示せるものだろうか?
「あっちゃいけない感情なんてないから」
新垣結衣主演の『正欲』でも、本作に通ずるようなセリフがあったのを思い出す。
多様性が叫ばれる現在、言葉だけが一人歩きしていて、本当の意味での多様性というのを理解するのは非常に難しい。
本作を最後まで見ても頭が混乱して、何が正しいのかは分からなかった。
レビューを読んでも人それぞれ考え方も違い、明確な答えは出ないまま。
いまもまだモヤモヤが残ったまま…。