このレビューはネタバレを含みます
ヒューマントラストシネマ有楽町で、2月と3月に1回ずつ合計2回鑑賞。
ポスターなどのイメージだけしか知らない段階では、まあ何となく「いかにもミニシアター向けの、地味だけどこじゃれてて雰囲気の良い佳作」レベルくらいだろうと勝手にタカをくくっていたんですが、これがまあとんでもないハイレベルな作品で、セリフを抑制させた演出があまりに素晴らしい、今年の私的ベスト5に絶対入れたい大傑作でした👏
主人公の初登場シーンって映画作品における肝の部分でいつも気になるけど、今作はこの時点で秀逸。アバンシーンの数分で、コットの人間性や恵まれない境遇を想像させてくれます。
2回目に見た時に気付く事も多くて、前半コットが学校から抜け出すシーンで早くも足の速さを感じさせる演出があったり、親戚のキンセラ家に向かう車中、コットが車窓から景色を見上げると雲が少しずつ晴れていって、次第に太陽が現れるんですが、このあとのコットの少し明るい未来を暗示しているように感じたりしました。
あと、キンセラ家に到着した時、アイリンがコットに視線を合わせて髪の毛に優しく触れながら出迎えてくれるシーンは、1回目見た時は何気ないシーンとしてスルーしていましたが、2回目見た時はここでもう落涙してしまいました😭
3人がまだ少し緊張気味な感じでダイニングで過ごしている時に、なぜかアイリン宛てによく電話がかかってきたりして、コットとショーンが2人きりになってしまうという演出には毎回クスッとさせられました😆ショーンも何か話しかけてあげたいという気持ちはあるんだろうけど、何を話して良いか分からないから何とも気まずい空気が流れるという。
あと2回目の鑑賞時は、死んだ息子のお下がりをまだ着させられている時のコットを見るたびに胸が苦しくなりましたし、いよいよコットが実家に帰らなければいけなくなった日、子供部屋の窓際で佇むショーンの後ろ姿には胸が張り裂けそうになりました😭セリフなんていらない。沈黙の背中が全てを語っていました🥹
ラスト、意を決して駆け出すコットの姿を見た時も涙腺崩壊😭ショーンに駆け寄ってハグ、コットの肩越しに実父ダンが歩いて近づいてくる姿も見える中で、ショーンにしか聞こえない声で「パパ・・」とコットがつぶやいたところで暗転するタイミングも完璧。
最初からずっとずっと良い上に、ラストの切れ味でさらに200%増しする作品こそが真の傑作だと思いますが、今作はまさにそれで、終わった瞬間、深い深い余韻に包まれます。これを書いている今も思い出してウルっとしそうになるくらい🥹正真正銘の傑作です。