たす

アメリカン・フィクションのたすのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.0
・「黒人」に対するステレオタイプな眼差しにウンザリした売れない作家が、酔った勢いで「ベタなステレオタイプ要素モリモリ」な作品を書いてみたらあれよあれよと大ヒットしちゃったよ~!!というブラックコメディ。

・各々のパーソナリティに沿った「リアル」さを求められる、というのは文学や映画製作の世界だけではなく、我々の身のまわりにもあふれているし、それにウンザリした経験は誰にでもあるんじゃないかな。

・この映画を見て、お笑い好きの女性タレントである奥森皐月さんの発言を真っ先に思い出した。彼女は自身のコラムの中で「メディアの”肩書”好き」について語っていた。以下引用。

----たとえばお笑い好きとして仕事をするときは、必ず数字として何時間、何本、お笑いを観ているのかを尋ねられる。高校生のころは必ず「現役女子高生」という肩書のあとに名前がついていた。結婚の発表をすれば「19歳」と載って、名前が書かれないこともあった。それに対して私がどう思うかを書くと長くなるので省くが、とにかく芸能界は「肩書」から物事を進めていると思う。もしかしたらこれは芸能界にとどまらず、どの世界にも共通していえることなのかもしれない。
(引用元:https://qjweb.jp/regular/104633/)

・これほんと、どの世界でも言えるよね…。ガワだけを見られて、中身を見てもらえないことのカスさよ…。

・たとえば女性が接客業をすれば「接客の細やかさは女性ならではだ」とか言われるし、たとえば10代・20代というだけで「若者ならではのフレッシュな視点」とか言われるし。かといって、受け手の思う「フレッシュさ」に当てはまらないと、受け入れてもらえないし。

・最近もTwitterで「#女性監督の傑作」というタグがちょっと流行っていて「は??」と思ってしまったところだったので(だって、女性監督の作品って、くくりデカすぎない!?どういうこと!?SFの傑作とかラブコメの傑作とかジャンルごとの話ならまだしも、どゆこと!?!?)、そのもやもやにフィットする作品だったなこれ…

・カスがよ~~!!と思うことが多々ある世の中で、この映画が生み出されて、かつ名だたる映画賞にノミネートされているのは皮肉がきいているな~と思う。

・「今こそ黒人の声に耳を傾けるべきよ!」のシーン、ガハハって笑っちゃった
たす

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