たす

ボーはおそれているのたすのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.5
・「ママ、気がへんになりそうです」←私もだよ!!!!!

・インターネット上で、サイケデリックな表現のコンテンツなどに対するコメントとして「インフルエンザの時に見た夢?」というのをよく目にするけど、この作品はまさにそれ…。

・「わけのわからなさ」「嫌さ」を期待して見に行ったので、期待通りではあった。

・他人の悪夢を、3時間覗いている感覚。主人公のボーはいわゆる「信頼できない語り手」なので、どこまでが現実でどこからが夢なのか我々には分からない(むしろ、序盤の”またあの悪夢を見たんです…”のセリフ以降実はすべて夢なのではないかとも思えるほどだ)。

・「こんなことが起きたらやだな、最悪だな」という不安が積み重なっていく様はどこか滑稽でコントのようでもあり、でもきっとボーにとってそれはばかばかしくて笑えるようなものではなく、常に眉が八の字になってしまう程度には辛くて苦しいものなのだろう。そんなボーの悪夢の追体験が、3時間ずっと続く。

・「家族」についてアリ・アスターは「逃れられない義務感」と答えていたようなので、まさにそういった感覚が如実に表れていたね。

・とにかく支離滅裂なうえにマジで長いので、劇場で見て良かったと思う(もし配信でこれを見ていたら、途中で脱落していたかもしれない)。私の見た劇場では皆さん最後までご覧になっていましたが(しかもエンドロール中に退出する人もほとんどいなかった)、他の劇場では「開始1時間程度で帰って行った人がいた」という話も聞く。まあ、そうなっても仕方ないとは思う…。

・そういった、劇場という拘束力のある環境で見ることで3時間走破できたという良さもあったし、終盤~エンドロールのシーンが映画館とリンクしているようにも感じられたので、映画館で見て良かったなと思いました。

・アリ・アスターのことはかなり好きですが(特にミッド・サマーはBlu-rayを持っているほどお気に入り)、正直これはたぶんもう一度見ることはないだろうなと思う…。

・でも、この奇妙な悪夢を少なくない人たちが共有できるって面白いと思うので、見た人同士で「マジで意味わかんなかったよね」と笑いあいたい。

・パンフレットがめっちゃ良いです。最高。装丁が良すぎる。買い。
たす

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