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アメリカン・フィクションのryodanのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
5.0
見終わってもなお違和感が付きまとう作品。この違和感がどこから来るのか?しばらく考えて気付いた。「トレーニング・デイ」のD・ワシントンを完全に否定されている気分であり、「パルプフィクション」のS・L・ジャクソンを完全に否定されたような気分である事を。言い訳ではないが、これは差別意識でもなんでもない。長年ハリウッド作品で培ってきた黒人像の賜物なのだ。個人的には腹をえぐられるような痛みでありショックだった。この二作品を「これぞリアル!」と思っていた節があるからだ。自分が思い描く黒人像は、常に怒りや哀しみを持ちながら、時に感情的に時に滑稽に振る舞う人々。。。「リアル」と思っていたものが実は「フィクション」だったと今作で気付かされたのだ。まさに作中の「F・・K」という小説だった。確かによく考えれば分かることで、ウチらが責任取るのにいちいち切腹しないのと同じように、日本人の中にもリバタリアンがいるように、個々に悩みや思いがある。「典型的な日本人像」というものがそもそも存在しない。それは日本人だから分かることで、「典型的な黒人像」というのも彼ら黒人の中にも存在しない。でも、これって「今」だからそんな価値観が生まれてきた訳で、20年前には表面化されてはいない。だから「トレーニング・デイ」でワシントンがオスカーを獲れたのだ。それを名作として疑いなく「リアル」と称賛し続けた己がいる。。正直そこを変える気はないけどね(笑)。今作は、ただそんな価値観に一石を投じた作品には違いない。日本が舞台になるハリウッド作品の「リアル」を日本人の自分が「リアル」とは感じないのと同じように、彼等にも同様の違和感があって当然だという事を今作で「初めて」知りました。
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