ヒラツカ

サンクスギビングのヒラツカのレビュー・感想・評価

サンクスギビング(2023年製作の映画)
3.7
イーライ・ロスが『グラインド・ハウス』の中で披露した予告編パロディを、ほんとうに一本の映画にしちゃったという企画。それはつまりは『ハロウィン』のパロディである。「スラッシャー」という無難なジャンルに安寧するのは、ある意味、映画の歴史への降参ではあるものの、ここまで堂々としていればもはや好感度が高く、いやー面白かった。
一連の事件の発端は、小さな街のスーパーのブラック・フライデー・セールに、単純で愚かな群衆が殺到するという、血なまぐさい大混乱。こういう、コマーシャライズされた扇動に踊らされる多数、というのが昔から大っ嫌いなのだが、たぶん、イーライ・ロスも同じ心意気の人なのであろう、このシークエンスの描き方が、殺しのシーンと同じくらい熱量があるんだよな。
キャスティングされているのは、ちっとも知らない安い役者たちで、なんせ英語版wikiでもページがない人たちばっかりだ。ジョニー・デップが売れてないころに『エルム街の悪夢』に出てたってのは有名だが、どうも今後もそういうことにもならなそうな面々なんだよな(今後スターになる人がいたらごめんなさい)。それでも制作費1500万ドルなんだね、20億円。
『グラインド・ハウス』はもう15年前だけれど、本作になると時代設定を直近まで引き上げたので、「冷凍庫に押し付けられて皮膚が剥がれたので、スマホの顔認識ができない」とか、「殺人鬼がインスタで犯行声明を出す」、みたいなことになっているのが興味深いのと、あとは惨殺されていく被害者たちが、例外なく意地の悪い人たちだというのが、モラルのレベルをポジティブ寄りにスイッチしていて、映画として優しい。ジョン・カーヴァー、ご主人を殺したあとに猫にご飯あげたりするのもほっこり。