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バティモン5 望まれざる者のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)
3.0
[] 60点

ラジ・リ長編二作目。前作『レ・ミゼラブル』にて世界的に有名になった監督の二作目は、イキったアレクシス・マネンティが火種を撒き散らすという基本構造こそ共通しているが、前作よりややトーンダウンした印象を受ける。老朽化し移民の巣窟となった団地をどうにかして破壊したい役人たちとその場で暮らしていたい移民たちという対立を、主人公アビーは非暴力で戦うことを選ぶ。本作品で興味深いのは政治家との近さだろう。副市長ロジェは違法食堂に顔を出していたし、新市長は市長になっても小児科医としての仕事を続けていた(でも、そんだけ近いのに対話できる場所は皆無で、ずっとすれ違っている)。イキり新市長の立てまくる死亡フラグがちゃんと回収されちゃいそうという不安が常に付きまとっていた…のはいいんだが、大体のことコイツが好き勝手やって炎上してるだけなので、流石に矮小化しすぎでは?前作はクリシェを踏み越えたが、本作品はその中に留まっている印象を受ける。また、中盤の展開もかなり強引で、いくら移民とはいえ5分で退去は流石に無理があるだろと思うなど。ケン・ローチみたいに、観客を感情的にさせたいだけなんじゃなかろうか。極悪バリバール姐さんが美味そうにタバコ吸ってるとこが好き。あと、狭い部屋から遺体を運び出すシーンで始まるバンリュー映画はラバ・アメール=ザイメッシュ『The Temple Woods Gang』に続いて二本目。

追記
上映後に監督と二人のプロデューサー登壇のイベントがあった。そこで、監督が現在の移民についての質問に回答したところ、客席にいたクレール・ドゥニが突然手を上げて監督の回答に補足を加えたという場面があった。マジで指導教官ムーヴで震えた(ちょう優しい補足だったのも含めて仏教官説あり)。
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