MISSATTO

バティモン5 望まれざる者のMISSATTOのレビュー・感想・評価

バティモン5 望まれざる者(2023年製作の映画)
4.1
元々(男女の恋愛もの以外の)フランス映画は好きだし、フランスにキラキラした幻想も持ってないし、移民問題や様々な差別があることも知っていたし、人種差別で言えばフランスでの実体験もあるけど、それでもラジリ監督の前作「レ・ミゼラブル」は衝撃的だった。
それなりに社会問題を扱った映画を見てきたつもりだけど、作品としての緊張感は、制作国関係なく、過去一だった。
だからラジリ監督の次作があったら絶対見ようと思っていた。

今作も緊張した糸は張られっぱなしだ。
重なる怒りや悲しみと共に祈りのような気持ちを抱えたまま展開を見ることになった。
だけど、どこかで「レ・ミゼラブル」よりも、自然でリアルな今の社会を描き出しているように思えた。
それは、緊張感だけではない、日常の様々な緩みを持った人間が描かれていたからだと思う。
社会問題を描く際に絶対的に必要な「そこにいるはずの人を、きちんとそこにいると描く」ことが出来た作品だと感じた。
特に、女性。そして高齢者。
主人公とも言えるアビーが、市長選挙に立候補し取材を受けた時の答え「Je suis une Française d'aujourd'hui. 私は今日/現在のフランス人(女性)です」が象徴するように、フランス社会の"今"を炙り出しているのは「レ・ミゼラブル」と同じだけど、一番大きく違うのは、アビーだけでなく色んな立場の女性に声と存在感を持たせているところだった。

最後は、楽観的ではないにしろ、"明日/未来"を感じることが出来た。
それは「レ・ミゼラブル」にはなかったものだ。

今の日本の社会問題を多く見出せる映画でもある。
単にフランス国内の社会問題を扱った映画とは思わずに(全国的には上映館が少ないけど)見れる人はぜひ映画館で見てほしい。

ラジリ監督の次作が出てきたら、見たい。
MISSATTO

MISSATTO