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コヴェナント/約束の救出のMISSATTOのレビュー・感想・評価

コヴェナント/約束の救出(2023年製作の映画)
3.6
試写会で先行鑑賞。
これは…英国人映画監督ガイリッチーと米国の名俳優ジェイクジレンホールによる、米軍(というか米国や西側諸国政治)に対する盛大で大真面目な皮肉映画なんだと思う。
このストーリーをただの美談として見ない方がいい。
ヒーローものでもない。能天気に感動なんか出来るわけがない。

『ジェイクジレンホール出演作に駄作なし』の持論は問題なく更新される出来だった。
そりゃそうだ。
何せ男男の友情やバディものを描かせたら世界トップクラスのガイリッチー監督作だもの。
それでも、ガイリッチー作品を見てきた者としては、珍しい、と思うほどに真っ直ぐに、シンプルに、事の顛末を描いていた。
だからこそ、2021年8月30日にアメリカ軍が突然驚くほど雑にアフガニスタンから撤退し、速攻でタリバンの支配が戻り、協力者を置き去りにした惨状を目の当たりにした私たちにとって、撤退するまでの長い間に何が起きていたのか、そこで葛藤を余儀なくされた人々がいて、そしてそれに対して米国はどんな力を持っていて、その力をどう行使すべきなのかが分かりやすくなり、実際はほとんど実行してないどころか、逆のベクトルに力を掛けている矛盾を感じ取ることができる。

重ねていうが、これは感動物語でも美談でもない。
いつだって、現場の人間の血が流されていることを、正確な映像作品として描き出しているだけ。
極限状態でギリギリ保とうとした人間性を感動物語として消費しようとする鑑賞者たちへの皮肉として、私たちは真っ直ぐに受け取る必要があるんだと思う。
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