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ゴールド・ボーイのmaroのレビュー・感想・評価

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)
4.0
2024年日本公開映画で面白かった順位:7/29
  ストーリー:★★★★★★★★★★
 キャラクター:★★★★★
     映像:★★★☆☆
     音楽:★★★☆☆
映画館で観たい:★★★★★

※以下、敬称略。
原作小説は未読だけど、二転三転どころか三転四転するストーリー展開とサイコパスすぎるキャラクターたちにメチャクチャハマる映画だった!
歯止めのきかなくなった少年たちの、あの物悲しくも小気味いい結末がツボる。
原作は中国の小説らしく、それゆえかあまり邦画っぽい感じがしなかった。

冒頭、東昇(岡田将生)が義父母を崖から突き落とすという衝撃的なシーンから幕を開けるこの映画。
誰にも見られていないと思いきや、たまたまその様子をデジカメの動画で捉えてしまった少年がいたのが、運命の歯車が狂うきっかけだった。
その少年というのが安室朝陽(羽村仁成)。
普通なら警察に通報すべきところなんだけど、朝陽含めた3人の子供たちもお金が必要で、昇を脅迫することを画策。
朝陽たちもそれぞれ複雑な家庭の事情があったわけ。

で、昇は脅迫を受けてるんだけど、相手が子供だからと常に舐めてかかるんだよ。
ところが、朝陽も悪知恵が働くもんだから、逆に昇の方が徐々に追い詰められてきて。
このまま朝陽にしてやられてしまうのかと思いきや、途中で朝陽からまさかの提案が持ちかけられ、事態は思わぬ方向に。

とはいえ、相変わらず昇は朝陽のペースに飲み込まれていたんだけど、最終的には年の功もあってか昇の方が一枚上手。
むしろ、朝陽たちがやはりまだまだ子供だったというべきか、爪の甘さが出てしまった形で幕を閉じると思いきや、、、朝陽はさらにその上を行く用意周到さがあったのよ。
昇は「大人を舐めんじゃねぇ」と言っていたけれど、朝陽からしたら「子供だからって舐めんじゃねぇ」って感じで。
この昇と朝陽のサイコパス同士の腹の探り合いが面白かった。

ネタバレにならないよう詳細は割愛するけれど、そんなサイコパスの朝陽に訪れたオチがこれまた痛快というか、まさかたったひとつの"純情"が彼の完璧に思えた計画を崩す一因になるなんて、誰も予想できなかったろう。

この映画で面白いのは、ストーリーの秀逸さもあるんだけど、もうひとつの要素として、昇を演じた岡田将生と朝陽を演じた羽村仁成の演技が挙げられる。
岡田将生は『ゆとりですがなにか』(2016)のようにゆるい役もいいんだけど、今回のように不敵に笑みを浮かべるサイコパスな役もすごく似合う。
で、羽村仁成はまた違ったタイプのサイコパスで、表面的には普通を装いながらも、その実態は感情が欠落したような、人の命を何とも思っていないような人格にゾッとする。
この2人の振り切ったキャラクターも本作の見どころである。

そんなわけで、目まぐるしく変化していく状況と2人のサイコパスが「いかに自分だけ助かるか」を考え実行していく過程がとても面白い映画だった。
2人からしたら、自分以外の存在なんてゴミのようなものなんだろうなー(笑)
舞台がカラッとした沖縄なのに、内容がジメッしている対比も印象的だし、すごくエンタメ性に富んだサスペンスなので、これはオススメしたい。
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