きた

アンダーグラウンド 4K デジタルリマスター版のきたのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

はぁ素晴らし…問答無用、唯一無二の作品。ユーゴの歴史とかあんまり知らなくてもこの切実な感じは伝わってくる。

ナタリアが調子良くてムカつくんだけど、この世の人とは思えないほど美しいので許す。ジャケットにもなってるあの戦車の砲塔と踊るシーンは映画史に残る美しさ。飛ぶ花嫁とか集合写真とか、あのあたりはバシバシ決まる画がある。

「波の下にも都はありましょうぞ」
冒頭からずーっと後ろで吹き続けてきた楽隊が水の中で吹いてるシーンは泣き笑いの感覚がある。

そういう調子でシリアスなシーンでもなんかおかしさを感じさせてくる。炎上した車椅子が十字架の周りぐるぐる回るとか。回る必要ある!?
イヴァンの贈り物、マッチで作った教会でヒモを引っ張ると鐘が鳴るんだけどその形をなぞるように自殺するとか。泣けるようなシーンで笑わせようともしてくる。

そういう涙と笑いを共存させた見せ方がなんか監督の人柄を感じさせる。「戦争反対!」をシリアスに訴えるんじゃなく、でもギャグにするわけではなく、もっと地に足着いた感じがする。

宴とかも悲惨な戦争中の精一杯のから騒ぎとか全然そんな感じはしない。楽しいことは楽しい、戦争や人死には嫌だ、辛い。それぞれが独立して同じ箱の中に入ってる。

「苦痛と悲しみと喜びなしでは、子供たちにこう伝えられない。『むかし、あるところに国があった』、と」

ラストもいい。
ドナウ河の下の国で、死んだ人たちはみんな仲良く酒飲んで、音楽はいつまでも鳴り響いていく。大地は切り離され、流されていく。(忘れられていく)
でも「この物語に終わりはない」。

完全版も見てみたいね。

余談だけど「オン・ザ・ミルキーロード」ってこれよりもっとキャッチーな見せ方に徹したものだったんだな。
きた

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