ラダ

水平線のラダのネタバレレビュー・内容・結末

水平線(2023年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

震災時に福島県内にいたもので、それに因んだ作品は避けてきた。例の事故のせいで人間の嫌な部分をリアルに見てきたから、わざわざ映画でまでと思うのだ。

ただ今回は仕方がない。相馬市・南相馬市で全編を撮影し、福島市で先行上映をし、主演のピエール瀧が舞台挨拶にやって来ると言うのだから……いや流石に「仕方がない」は嘘かもしれない。なぜなら、しっかりと2列目を確保して電気グルーヴのグッズに身を包んで隣県から臨むくらいにはノリノリだからだ。


スクリーンに映る松川浦はそれほど悲しく描かれていなかった。監督が「役づくりをさせなかった」というピエール瀧の素の演技が心に刺さる。ひたすらに悲しみを掘り続けるのではない。普通に笑い、戯けながら生きているからこそ、それまで側に居た人の不在が辛いのだ。

個人的には「風化」に対して、瀧演ずる真吾が大きな声(と顔)ではっきりと物申してくれたのが嬉しかった。あの一言に激しく涙した。忘れられるものならば、あんな記憶なんて失くしてしまいたい。でも忘れられない。そう言うものなの、本当に…。

ただ一つ。肝心なジャーナリストが突き付けるネタに心が動きづらいのは、自分が海洋散骨に対する論議に参加してきていないからなのか、単純に脚本が弱いのか、ジャーナリズム気取りの演技がいかにも悪役過ぎたのか分からない。

絶妙な親娘関係の描き方が素晴らしかっただけに少々惜しい。少々。だけど大きい。
ラダ

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