shibamike

パーマネント・バケーションのshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

B・A・M・I・K・E、バミケ!
B・A・M・I・K・E、バミケ!
バーミケ、バミケ、バーミケ、求人♪
バーミケ、バミケ、高収入♪
バーミケ、バミケ、バーミケ、求人♪
バーミケ、バミケでアルバイト♪

「高収入求人情報 (シ)バミケ」


--------------------------------------------------


アリー「僕の人生は旅であり、僕の旅はパーマネント・バケーションだ。」

有りっ体に言うと、アリーは無職のプー太郎に他ならないのだけれど世間に跋扈する
 「働いたら負けかなと思ってる」
系の有象無象という訳ではなく、世間一般に馴染めず、だうやったってアウトローアウトローと打者に厳しめのコースへ寄ってしまう悲しきロンリーチャップリンのやうに思えた。

アリー自身、自分が世間一般とズレているということを理解していて、若いのにそのことを「世の中おかしい!」, 「だうして僕のことをわかってくれないの!」というやうな方へは行かず、ただ淡々と自分が世間一般とかけ離れていることを受け入れているやうに見えた。しらけ世代というやうな時代の雰囲気なのか。かと行ってアリーは無気力という訳でもなく、不思議な若者。

「人間は皆孤独で、孤独をごまかすために働いたり野心を持ったりする」と言いながら、そんなことはできない・したくないアリー。アリーが孤独を感じないためにできることは漂流であり、作品の大半でニューヨークを漂流するアリーが描かれる。

街を漂流してみても、イカれたアリーの元にはイカれたキチガイ天使しか現れない。類友効果発動全開という感じである。
 何かこうありますわな。何がどうと言う訳でもなく、何となくこの人には話しかけ易い的な。そのストライクゾーンがアリーの場合、キチガイ天使に特化していたということでせう。
 爆撃機に怯える元軍人?、精神衰弱の母親、階段で意味不明に歌うヒス女、映画館のドップラー効果おじさん、ブバブバ吹きまくるサキソフォン吹き。
変人の金太郎飴よろしく次から次へと、手を変え品を変えキチガイ天使が現れる。そして、キチガイ天使の大ボスはアリーに他ならない。

ニューヨークを漂流しても孤独を埋め合わせられなかったからか(キチガイばっかりなんだもん😠!)、ニューヨークにサヨナラを告げ、パリを目指すアリー。旅客船から見えるニューヨークが寂しげに見える。
どこへ行ってもおんなじだぜ。と思うけれど、アリーにもそんなことはわかっているのであらう。それでも行かずにいられない!
恋人とはもう会うことはないかも知れない。港で会ったパリの若者のように世界には悩めるアリーが案外存在するのかも知れない。(アリーのことをジャームッシュ監督本人と見なせば、その後の活躍が証明するやうに、正しかったということでせうね)

アリーにとって人生は旅で、それは「パーマネント・バケーション」と言う。永遠の休暇。
 何にしても「永遠」となると地獄である。それが休暇であらうと愛であらうと逃げ場のない強制になる。
10代中盤の若さでアリーは人間の一生が永遠に続く空っぽの毎日に他ならないことを悟り(←自分の妄想)、そして彼はその不安や恐怖をごまかすために世間一般と戯れることをできないことも理解している。彼の絶望たるや。しかし、彼は恐れず全身全霊でその永遠の旅に飛び込んで行くのであった。ボンボヤージュ、アリー!
休暇を無闇矢鱈とありがたがって、
「休暇?永遠に?!ラッキー!!」
と喜んでいてはイケない気がした。
 映画を見ていてショックだったのが、自分は人生というのは老後のやうなものと考えていた(おじいちゃんじゃん)のに対し、アリーが「永遠の休暇」だと言い、「老後」と「休暇」じゃ人生に対するマインドやら姿勢が随分異なるわなぁ、と思わされた。
 パーマネント・ヘルとか、パーマネント・プリズンとかではなく、パーマネント・バケーションというところにジャームッシュ監督のやさしさを感じる。「この世は大変だけど、全部バケーションなんだから、気楽に行かうぜ。」と言っているやうな。

森鴎外の「青年」という作品に、
 「その先には生活があると思うのである。そしてその先には生活はないのである。」
みたいな人をおちょくったやうな文章がある。自分の人生はいつ始まるのだらうか、とか思っているとしたらそれ間違いだぜ、みたいなことを言っているのだと思うけど、アリーにはそれがわかっている気がした。
 この映画には「自由」があちこちに散りばめられている。チャーリー・パーカーのジャズ、アパートでのダンス、街の漂流、虹の彼方に、キチガイ天使達、ニューヨーク、何もかも自由の象徴と思った。世間一般とアリーの大きな違いはこの自由にあると思う。パーマネント・バケーションが自由そのものなのかも知れない。

パーマネント、パーマネント…と脳内で呟き過ぎてしまい、久しぶりに美容院でパーマでもあててみやうかしらん(テディボーイ・スタイルで)、と満更でもない気分にさせてくれるガーエーであった。



上映が終了し明るくなった場内、「…さてと」と例のごとく鎖カタビラを着用し、鎖鎌をヒュンヒュン回しながら、UPLINK吉祥寺のロビーにていつもどおりスタッフ数名に対し、パワハラ言動をしようとしたところ、
スタッフ「(柴三毛を指差し)あの人です!」
柴三毛「...?」
警察「あのぉ、そこのおじさん、ちょっとこっち来て。劇場の方からね、苦情が来てるんですよ。いつも理由なくパワハラしてくる客がいるって。」
柴三毛「(パニック)い、いや、そんなことしてませんけど?しょ、証拠とかあるんですか?」
警察「うん、スタッフの方がパワハラの音声を録音してるし、監視カメラに動画も残ってるんで、証拠は完璧にある。ま、詳細は署の方で聞くんで、とりあえず同行してもらうから。」
柴三毛「いや、無理です!困ります!無理です!!ちょっと待って!!嘘よ!!!誰かの陰謀よっ!!いやぁああああ”あ”あ”あ”ああ”っ!!(連行される)」
スタッフ「くたばれっ!キチガイ中年!吉祥寺に二度と来るなっ!!(塩まきながら)」
と、自分の絶叫がパルコに響き渡るなか、自分とUPLINK吉祥寺によるひと夏のアバンチュール~permanent power harassment 2021夏~は国家権力の介入という形で終わりを迎えた。このような不本意な形で、自分のジム・ジャームッシュ監督特集行脚が終わることとなり、慚愧の念に堪えない。
 ありがとう、ジム・ジャームッシュ!
 また会う日まで、ジム・ジャームッシュ!
ジム・ジャームッシュ「二度と来んなっ!」



バ三毛 バケーションの一句
「永遠に 布団の中で 微睡みたい」
(季語:布団→VUITTON→高い→エヴェレスト→寒い→冬)
shibamike

shibamike