円柱野郎

もしも徳川家康が総理大臣になったらの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

新型コロナ禍の2020年。
総理大臣が新型コロナに感染し死去した日本は、AIと3Dホログラムによって歴史上の偉人を復活させ、一年間の時限内閣を組閣することにした。

タイトルは「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」のパロディかな?
予告編を観たときには全然興味がわかなかったけど、「こんなネタ映画に野村萬斎(主人公・徳川家康役)が出るの…?」というところだけは気になってました。
実際に観てみると、後半の国民やマスコミの政治に対する意識についての風刺部分がマジメではあったので、そういうところにこの作品の意義を見出したのかなとは思った次第。
まあ多少説教臭くはあったけれど、間違ったことは言っていない。

この設定って、本来は出オチな話にしかならないネタのはずなんだよね。
それでも長編として成立したのは前半と後半でちょっとトーンを変えたからだろうか。
冒頭で偉人たちが就いた閣僚ポストの紹介などは面白かった。
(現実的にAIに政治を任せられるかどうかは置いておいて)偉人のイメージに対してしっくりくるところに配置しているあたりの“ネタ”は、ジョークとして面白いとは思う。
ちなみに個人的に一番面白かったのは、閣議の席で総理の家康が部屋に入ってきたときに、農林水産大臣の徳川吉宗と厚生労働大臣の徳川綱吉が「大権現様ぁ!!」とひれ伏していたシーンでした。
そりゃそうなるよなw
あと豊臣秀吉役が竹中直人ってのもいいと思う。
それなら吉宗は松平健にしてくれよとは思わなくはなかったけど、髙嶋政宏もいい味は出してましたよ。

本音を言えば新型コロナの対策はもっと奇抜な誰も思いつかなかったようなことをしてほしかったとは思う。
結局のところロックダウンとワクチンでは、あまり現実は違わなかったからね。
(※現実には日本ではロックダウンはできないので、実際に発令された緊急事態宣言はあくまで自粛の要請ですが。)
秀吉が鶴の一声で行った太閤給付金のシーンで「とりあえず配ればいい、不正受給をする者がいたら後で打ち首じゃあ」と言っていたけど、これは観客に「そうだそうだ」と思わせておいての後半の独裁云々に関する布石かな。

結局のところ、後半に目立っていたのは三英傑(信長・秀吉・家康)の関係性とそれに倣った権謀術数の政治劇(表面的だけど)。
そんな展開が説明なしに成立するのも、日本人にとってこの三人の存在がいかに常識の中にあるのかという証左でもあるのだろう。
そういう意味でも興味深い作品ではあったけど、逆に言えば偉人のチョイスがかなり表面的ではあるので、真の意味での歴史の深みを感じるところまではいかない作品でもある。
まああくまでジョークとして楽しみました。
円柱野郎

円柱野郎