円柱野郎

クワイエット・プレイス:DAY 1の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

音を立てると殺される。
SFホラー映画の前日譚。

前2作の主人公だった一家の話からは離れ、NYに住む女性・サミラが主人公。
緩和ケアのホスピスにいる彼女は末期癌で余命幾ばくもないのだけれど、そんな時に宇宙生物の飛来したDAY1が始まる。
前作でも少し描かれてたDAY1の様子は郊外が舞台だったので、本作で描かれるNYという人口密集地での襲撃の様子は目新しさもあるかな。
でも肝心の宇宙生物自体は観客にとってその姿かたちも行動力も対処法までバレてしまっている存在なので、そういう意味での新鮮さはない。
じゃあそれをどう話として盛り上げるかということで、主人公の“状態”がキモになってくるのだろう。
要するに、「末期癌でたとえ襲撃から逃れてももはや長くは生きられない」「なら最期に何をするか」が主人公のメンタリティなのだ。

最初の方は主人公がなんでそんなにピザを食べることに固執するのかが見えにくかったのだけど、その理由が次第にクリアになっていくところにドラマはある。
物語として極限状態の中で危険に飛び込んでいく行動原理を作ることはなかなか難しいけれど、「どうせ死ぬのなら最期に想いを遂げたい」という感情を話の動輪にしたのは悪くなかったかな。
本懐を遂げた彼女は、その最期の夢を叶えてくれたエリックを逃がすために行動するわけだ。
演じたルピタ・ニョンゴが上手い。
エリック役のジョセフ・クインも毒気のない感じが良かった。
ちなみにちょっとだけ出演しているジャイモン・フンスーは前作で登場した島の長。
そういう意味ではシリーズの地続き感はあるけど、まあそこはあくまでファンサービスの域を抜けないかな。

出演者によるドラマで工夫を感じる一方で、それ以外のモンスター映画としての面白さはやや物足りなさを感じたのも事実。
化け物としてのタネがバレているのが最大の要因だけど、もう少し「どうしようもない状況からの一発逆転の打開」みたいな緊張感は欲しかったかもね。
円柱野郎

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