つかれぐま

テルマ&ルイーズ 4Kのつかれぐまのレビュー・感想・評価

テルマ&ルイーズ 4K(1991年製作の映画)
4.0
24/3/6@UPLINK吉祥寺❷

【逃げない二人の潔さ】

かつてアメリカ映画の王道だった西部劇とニューシネマ。これをイギリス人監督の視点で蘇らせるのだが、主人公は女性二人。

『テルマ&ルイーズ』というタイトルからして『ボニー&クライド』『ブッチ&サンダンス』という60~70年代ニューシネマを意識した作り。ニューシネマのテーマの骨格は反体制なので、抑圧されたアメリカ中西部の女性を主人公に置くのは当然で、むしろ面白そう。「そもそもなぜ男の話ばかりだったのか」そんな疑問を作り手が感じたのだろう。

二人が疾走する荒野はアメリカ人には見慣れた風景なのだろうが、イギリス人のリドリー・スコットには被写体として魅力的だったのだろう(我々日本人にも)。サービス満点の遠景ショットの連続が、シネスコ画面に映えてワクワクする。

主人公の二人が旅することで成長し、友情を深める。そんなベタな話でも、視点を変えるだけでこれだけ面白くできるという監督&脚本が素晴らしい。解放された2人は自由を謳歌するだけでなく「女性である」というシェルターに逃げ込まなくなるのが良かった。これぞジェンダーレス。新たに背負うべきものはちゃんと背負い、退路を断った二人の潔さを応援したくなった。ラストシーンはその象徴。二人の乗ったサンダーバードが『バックトゥザフューチャー』のように現代に来たら、2024年のアメリカをどう思うだろうか?

フェミ文脈で語られがちだが、それが目的の映画にはなっていないのも良い。純粋に映画の面白さを積み上げる手つきで作られた結果、そういう見方も自然にまとった、とても素性の良い傑作だ。