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これで三度目のcyphのレビュー・感想・評価

これで三度目(1952年製作の映画)
4.0
相も変わらず何を見せられてんだ!?の気持ちに迷いこみつつ根底に流れる恋愛哲学がやっぱりグッド…そしてあっけらかんとした強引な奇跡よ!2回妻を寝取られて2回離婚してる冴えない宝石商の3人目の妻(「君はわたしの未亡人になるね」と初対面で言われてその通りになったことでおなじみギトリの最後の妻ラナ・マルコーニが演じてる)がギトリ演じる有名俳優との不倫の恋に乗り出すが…というお話

妻とその友人がガールズトークのノリで聞き出す宝石商の寝取られエピソードもそれぞれパンチが効いていて、特に1人目の精神不安定な妻、夫のそっくりさんを夫と間違えて不貞しかけて話をつけるための決闘ごっこで倒れたそっくりさんの方に惚れ込んでしまった、つまり貞淑なままに不倫をしたというこんがらがったエピソード 語りが何重にもなるので着いていくのが大変だけどずっとコントみたいで楽しい ギトリのお得意素敵デートのターンもいい 誰もいないナイトクラブを妄想で賑わせて遊ぶデート

「素晴らしい場所には二度と訪れるべきじゃない 素晴らしい絵画は二度と目にするべきじゃない 素晴らしい本は二度と読むべきでない」と口を変え繰り返し語られる哲学が登場人物全員浮気性という破天荒な設定に謎の説得力を与えててそれも愉快 実際に、「謎の説得力」という最終兵器だけで積み上げられた伏線が破壊されていく冗長なくだりは圧巻 「閉幕後にまた来る」

あとおなじみ冒頭のスタッフ紹介、いままで観た中でいちばん楽しかった 大勢が関わる作品であるため彼らが乗ってくる乗り物もまた様々です 原作者製作者監督を乗せてやってくる高級車、車(オート)をヘリコプターと間違えてヘリで来る助手、馬に乗りたいと申し出て一人乗り馬車でやってくるラナ・マルコーニ、自転車に乗ってにこやかにやってくる大勢の見習いスタッフたち、船を操縦して川を下りやってくる俳優、汽車やバスで降り立つ俳優たち、自前の楽団を指揮しながら引き連れてくる作曲家、いつものおばさん女優は最後に歩きでやってきていちばん最初のカットに登場する…光も綺麗でみんな生き生きとスタジオに入っていくのがなんか奇跡みたいでこのひとたちがいま誰も生きてないことが不思議で感激してしまった その後定型化したお茶目として広まらなかったのがかえってそのブランド価値、ギトリのお茶目さのオリジナリティを高めてる
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