シャチ状球体

ザ・キッチンのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

ザ・キッチン(2023年製作の映画)
3.3
新自由主義政策が続いたイギリスの行き着く先は、最新技術が人々の管理に使われて一般的な生活費で賄える住宅が極端に不足するディストピア。

警察のドローンが常に上空を監視してるから地下や天井に覆われた場所に家のない人たちが集まっているのは妙なリアリティがある。
半面薄味で地味な人間ドラマは舞台が近未来であることとあまり相性が良くなく、イジー達の置かれた環境に実在感を覚えることは難しい。

国家権力の弾圧によってイジー達の生活が壊されてしまう展開があるけど、この描き方だと国家による弾圧さえなければ貧しくても身を寄せ合って生きていける……みたいな風に捉えられてしまうので、格差社会を批判できているかどうかは微妙。
舞台が現代ならまだしも、わざわざ近未来に設定したのに風刺性が弱いので現実と地続きの世界とは考えにくいのは結構な難点だろう。

上層と下層に分断された都市デザイン、実存を無視して市民を排除する警察、唯一未来のない生活から一時的に抜け出せるバイクというアイコンといった光る要素もいくつかあり、もう少しそこら辺を活かせていれば作り手の意図したメッセージが伝わりやすくなったかもしれない。
シャチ状球体

シャチ状球体