ヨーク

ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争のヨークのレビュー・感想・評価

3.4
どうしようかな、これ。かのジャン=リュック・ゴダールの遺作として上映されたこの『ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争』だが、どうしたもんかなコレと思うよ。
まず困ったのはスコアを何点にしようか困って、いっそのことスコアなしにしようかと思ったんだけど、700本以上フィルマークスで感想文を書いていて初めてのスコアなしってなるとそれはそれで何か神格化してるみたいで嫌だなぁって思ったんですよね。じゃあ1.0とかにしとくかとも思ったがこれどう考えても未完成でしょ? ゴダールは自死だったと聞くがこれをもって本作の完成としたとはさすがに思えないんだよね。作品が完成するということ自体が映画の終わりだとすることで、未完であることがある種の完成なのだということをゴダール先生なら言いそうというか、ゴダールという人は撮影ではなくて本質的に編集によるパッチワークの人(特に『映画史』以降は)だと俺は思っているので、その在り物をパッチワークすることしかできないというある種の絶望への答えが未完による完成、ということは言えるかもしれない。いやでもやっぱ未完成だと思うし、そう思いたいというのもあるよ。そしてそこにはイメージの喚起というか、そんな大げさな言い方じゃなくても映画(じゃなくて他のものでもいいけど)を作り始める際の、本人にしか分からないような断片的なメモというものがあるだけで、本作の中でそのメモやそこから垣間見えるイメージが結実されることはない。そこの部分が前作『イメージの森』から地続きになっている感じというか『イメージの森』のラストに本作をくっつけてもあんま違和感ないんじゃないかな? と思ったので本作のスコアは『イメージの森』と同じ点数にしました。
しかし、ゴダールの死については俺はあまり知らなくて、というか訃報を聞いた後にニュースとか全然漁らなかったんですよ。何か死因とか最後の言葉とか知りたくなくて。だから本作を観ようかどうかも迷ったんですけどね、でも一応観とくかと思って観てみたら、最初に書いたように、どうしたもんかなコレ、だったわけですよ。まぁ率直に言って面白くはないわな。冒頭メインビジュアルである黒い文字? かなんかを赤い塗料で塗りつぶした画がスクリーンに映し出されて2~3分(もしかしたら4分くらいあったかも)ほどずっとそのまま画面が一切変化しなかったときは(え!? まさかこのまま終わるの!? ランタイム20分の短編とはいえ1000円払ったんだけどこのメインビジュアルだけ観せられて終わり!? そんなの伝説の映画になっちゃうじゃん!!!)と思ったんだけど、数分後には画が変わって正直ちょっとガッカリしましたね。しかもそこからはただのスライドショーだったからな。未完成(一応そういうことにしておく)なのは知ってたからラッシュ的なものの断片だけを観せられるんだろうと思っていたが、スライドショーだけとは中々のガッカリ具合だった。一応途中で『アワーミュージック』の断片も流れたが、だからどうしたのだという感じである。
なのでこれ、ゴダールの名前で最後に小銭稼ぎでもするかくらいの意味以上のものはないんじゃないかなって思えて、ゴダール自身も「これがゴダールの遺作です!」みたいな売り方されるのはあの世で(勘弁してくれよ…)って思ってんじゃないかなとも思うんですよね。だから完成品を観たかったっていうのが率直な感想ですね。それ以上はない。
最後にハンナ・アーレントについて言及されていたが、ちゃんと生きて現在のイスラエルとパレスチナの姿を見て、その上でハンナ・アーレントをどのように引用するのかを見たかった。俺がこのイメージの断片から言えることはそれくらいですかね。
あ、もう一個あったわ。金返せ。これはゴダールにというか、これで1000円でも巻き上げてやろうと本作を企画した人にってところですが…。1000円あったらラーメンにミニチャーシュー丼くらい付けられるじゃねぇかよ! って感じですね。だから繰り返しになるが完成品を観たかったですよ。
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