いんしょーと

ミレニアム・マンボ 4Kレストア版のいんしょーとのレビュー・感想・評価

4.0
ホウシャオシェン監督映画、初体験。
ああ、この監督好きだ。特集上映どこかでやってくれないだろうか…

新世紀を迎えた2001年を撮った映画。しかもそれは、もう "10年も前" のことなのだ。
スーチーが演じるヴィッキーが、モノローグと共にその夜に手招きする。この冒頭だけで、ぐっと掴まれる。モノローグで語られる経験を、映画の中でなぞっていくのだけれど。
もう "振り返る" ことのできる過去。でも、出来事出来事でその重みづけは違くて、その重みも含めて記憶に残っていて。
絶対に、幸せにはなれない、そうずっとわかっている恋人ハオとの時間は、幸せがあろうが辛かろうが、完全に、記憶にべったり張り付いている。
住む世界も進む道も、元々は一緒だったのもしれないけれど、互いが属する世界は離れていく。20世紀と共に、別れを告げねばならない関係になる。
お互い分かっていながら、離れられない。きっかけがなければ、そうだったろう。
自分から離れてはまた求めたり、違いを諭しながらも自分がそれを一番受容できなかったり。
それが、きっと、新世紀の幕開けだったんだろうな…、ちゃんと振り返ることができるまで、10年かかるのか。…かかるのかもな。

辛かった恋愛は、心に傷をつくるけれど、その傷って、残る。時に見つけて思い出して、撫でる。なぞる。その傷も含めて、優しくくるんでくれる存在が、ヴィッキーには現れた。
素敵な映画でした。