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津島 ー福島は語る・第二章ーのsnatchのレビュー・感想・評価

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私の中では、福島県の原発事故は3.11が近づいてくると気にはする、そんな風になっていた。近いのにどこか遠くなっていたので観に行きました

原発から北西に30キロ離れた浪江町の津島。人口1400人で山々と川 蝶や花 野鳥のさえずり 四季の移り変わりが日本画のよう。でもあの日の風向きで高濃度の放射能に汚染された。帰宅困難区域に指定され、ほとんどの住民は今も戻れずにいる
以下、中身に触れています





この津島という農業と酪農の地域は、満州から引き揚げた人達が入殖した家族が多い事を初めて知った。ゼロから開拓した地元の人達も次三男を満州に送った家族も多く、無一文の引き揚げ者を助けた
戦後から昭和にかけての日本人はこうだったのだろう。教科書には載っていないリアルな戦後の日本人が歩いてきた道だ

離婚して女1人で4人の子育てしながら工場で肉体労働しているカノさんに、近所の人は野菜や米を差し入れしたり、都会から嫁いできた21歳のひろみさんを見守ったり。会えば必ず挨拶して声かけて、元気がなければ話し聴いて、美味しいものがあれば交換し、看護師さんは患者さんの家族ぐるみで親しくなり、皆んなで伝統芸能を継ないで祭りや運動会に誘い合い楽しむ
皆んな言う、あたたかい場所だった。助けてと言えたし助けた。ここで育ててもらった。ここで自分のこれからを想像し創造することもできたと、人生の先輩の方々が振り返って言う言葉は響く
その時の映像はないけれどキラキラと輝いていた津島がどんどん見えてくる。津島の話しをする時の皆さんの目も温もりがあり輝いている

その居場所が永遠になくなり避難地域で暮らしている人達は、人と人の縁が薄まり、苦しみを胸にしまい込み、笑顔がが消えていく
高齢の両親に、いつか帰れるからと嘘を言いながら避難した知らない土地でひっそりと亡くなり見送るしかなかった息子さん。避難先の学校で心無い差別を受けて今も深い傷を負った若者たち

皆さんの心をえぐった大きさはこんなにも、深く刺さったままで、今まで想像したことがなかった

住民が政府や東電に望んでいる原状回復には莫大な費用が掛かる
でも監督さんが言った通り、検討中のまま何年も置き、この年老いていく人たちに移住してもらった先で我慢してもらうしかないというのは棄民に等しい。また少数だからと棄民にされるに等しい現実は日本のどこかでも起きていると話されました

一館でも一日でも多く上映場所が増えればと思います
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