ひば

ボビ・ワイン:ゲットー・プレジデントのひばのレビュー・感想・評価

-
いつの間に映画が撮られアカデミー賞に入っていた。わたしがボビワイン氏を知ったのは2020年に見たドキュメンタリーだ。なんか…世界でも知っとくか…とちょうど勉強し始めた頃のノート1冊目に彼の記録が残っており印象的な人物、映画は一度TV放送され録画をとっておいたのでもう一度見返してみた。
まず以前見たドキュメンタリー『スラムから議会へ 独裁と闘うミュージシャン』(原題:From Ghetto to Parliament (2019年)) のメモを。ウガンダは人口8割が35歳未満の国。住宅地が密接するゲットーで彼は生まれた。現職のムセベニは戦争を終わらせ安定をもたらしたが30年以上の独裁を続けている。2014年、人気歌手だった32歳の彼は腐敗を嘆く歌を発表し良くも悪くも目立った。2017年、大統領選の年齢制限撤廃法案が提出。これが通れば2021年の選挙にムセベニは立候補でき独裁が続くことになる。使命感と多くの支持で議員となり"憲法に手を出すな"のメッセージを掲げ支持を増やしていく。キング牧師の「辛いのは敵ではなく友の沈黙」を引用し国民の権利を主張した。だが法案は可決。2018年、彼は野党団結を呼び掛ける。そんな中彼のドライバーが殺害、混乱の中彼は大統領車列への投石容疑で逮捕され軍施設に送られ酷い拷問を受け喋れないほど身体を壊されたが、2021年の大統領選立候補を検討、という内容だ。
今作では市民を抑え込む警察に対し「あんなのは怖くはない。あの人たちだって結局自分と変わらない、彼らも同じ試練に立ち苦しみの中で自由を求めている。いつの日かきっと仲間になる」とこぼしていた。この言葉にすぐジーンシャープの『独裁体制から民主主義へ』を思い出した。独裁には独裁につく人間を少しずつ同じ市民として味方につけて非暴力かつ"政治的柔術"で立ち向かえ、というもの。軍事政権を暴力で倒しても頭が入れ替わっただけの軍事政権になる可能性が高い、また権力とは常に腐敗を引き起こす。"民政のうわべ"と表現され本作の中心的構造にある選挙で一方的に実弾や手榴弾が飛び交っている。これをさらに追い詰めたのがコロナだった。生活と情報をとりあげ国民の分断煽り、言葉の牽制はじわじわと直接的妨害や暴力に移行していく。気付くと選挙活動での死者は3桁に、みな彼の支持者だ。流血で横たわる人々に頭を下げ、「私は諦めない」と世界へ宣言する。国際世論の介入で政治的柔術を発揮しなければならないところを、なんだか…どうもおかしいぞとなるのは昨今の西欧への不信感を先取りしたような…弾圧が酷いためクレジットに載せられない人が多かったとのことで数えると70人いないくらいで危機感がある。本人のアカウントを見る限り現在でも実弾飛び交う状況が続いているようだ。自由というものは誰も守ってはくれない、とりあげようとする人間と闘い続けるとき自由はその人の一番近くに存在する


今はどこで見れるのかわからない。日本語字幕はないんですが、ナショナルジオグラフィック公式が配信しています
https://youtu.be/8QXubl0V_8g?si=0DaLEKROeJPRvNf_
3:50~あたりのボビ本人が歌う「Time Boom」という歌がよいですね https://youtu.be/CSoizjPvLyk?si=ECrZRyq_-nFa2gkb
ひば

ひば