前髪メガネ

パレードの前髪メガネのレビュー・感想・評価

パレード(2024年製作の映画)
3.9
やり残しがある事も悪くは無いのかもしれない。と思える作品。

瓦礫が打ち上げられた海辺で目を覚ました美奈子。離ればなれになったひとり息子の良を捜す彼女は、道中でアキラという青年や元ヤクザの勝利、元映画プロデューサーのマイケルらと出会い、やがて自分がすでに亡くなっていること、未練を残して世を去ったため、まだ“その先”に行くことができずにいることを知る。そしてアキラたちもまた、さまざまな理由でこの世界にとどまっていた。現実を受け止めきれない美奈子だったが、月に一度死者たちが集い、それぞれの会いたかった人を捜すパレードに参加したことをきっかけに、少しずつ心が変化していく。

藤井道人作品はそこまで多く観てきたわけではないけど初のNetflix作品だからなのか本作は結構過去作との繋がりが見えた気がする。

自身の死との向き合いや未練を題材にして、そこへ3.11の災害を取り込んでいる本作。

完全な死後の世界ではなく、この世とあの世の狭間の世界っていうのは面白いし、時の流れと同じで一方通行の流れの中で留まり進み方を決められるって言うのは良かったかな。

群像劇形式なのも良かったけど、ただせめてあの場にいた人たちのドラマはもっと深掘って観たかった。
ひとり息子を遺してしまった美奈子は間違いなくどうにもならない絶望感はあるとは思うし奈々の境遇も耐え難い。
でもヤクザと家族や新聞記者で描いたような絶望的な理不尽さを本作でも見せて欲しかった。未練のある死をテーマとしているからそこの演出とかを期待していました。

余命10年程ではないがマイルドな作品。

一点、気になったのは3.11も題材にしている割には美奈子意外の物語には震災の爪痕が見当たらなかった気がする。舞台は東北ならその大変な環境を生きている人たちだったりも扱って欲しかった。
色んな地域の人が集まっているコミューンならわかるけど、みんなちょっと車移動した場所にいた人たちっぽく見えたし。
前髪メガネ

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