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心の旅路のTSのレビュー・感想・評価

心の旅路(1942年製作の映画)
3.7
【世界大戦の後遺症】79点
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監督:マーヴィン・ルロイ
製作国:アメリカ
ジャンル:恋愛
収録時間:124分
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なかなかグッとくる邦題です。第一次世界大戦の砲撃などにより言語障害などを残してしまった一人の兵士がとある女性と恋に落ちる話です。しかし、そこからが一捻りあります。まさに心の旅路。記憶というのは重要であるものなのにいかに脆いかということがわかります。

第一次世界大戦末期。メルヴェリーの精神病院に入院しているとある英国陸軍大尉。彼は戦争の後遺症により記憶喪失になり、また言語障害を伴っていた。両親のことも思い出せないまま月日が流れ、ある日散歩をしているととある女性と出会うのだが。。

第一次世界大戦の後遺症は有名です。特に「シェルショック」という後遺症は個人的にも印象的であり、例の塹壕戦の結果生じたものとされています。今作のこの主人公はそこまでの症状ではありませんが、記憶を喪失しているので自分が何者かもわからない。その何者かわからないというわだかまりを残したまま、その女性と恋に落ちていきます。過去の記憶を消し去り、第二の人生の始まりとなったわけですが、ひょんなことから転換期が訪れます。この一捻りが今作が名作たる所以なのだと思います。個人的にはもっとやり方があったのでは?やや遠回りではないか?と思いましたが結果オーライというやつです。

何よりも、この時代の作品の女優の演技は特に輝いていますね。ポーラを演じるグリア・ガースンは『ミニヴァー夫人』においても主演女優賞を受賞しています。未見ですが近々また見てみたいと思います。なお、今作と『ミニヴァー夫人』は同年の作品であり、作品は違えどグリア・ガースンは作品賞と主演女優賞のどちらも受賞しているという立場になりますね。そんな彼女の悲しみの表情は特に素晴らしかったです。やはり女優の涙はモノクロ映画でこそ、もっとも輝くと思うのは僕だけでしょうか。

個人的にはもうひと押し欲しかったですが十分名作だと思います。単なる儚い恋愛物語だけでなく、間接的に戦争が人間に与える影響も示唆しています。全体的にはやや淡々としてるので、クラシック映画に若干慣れておいた方が退屈しないかもしれません。
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