ルサチマ

In Order Not to Be Here(原題)のルサチマのレビュー・感想・評価

In Order Not to Be Here(原題)(2002年製作の映画)
5.0
輸入ソフトにて。アメリカの郊外と思われる夜の路地を監視カメラの静謐な映像によって息を潜めて見守り続ける。冒頭からただならぬ気配を感じながらも決定的な何かは怒らぬまま、途中クロースアップで異質に捉えられる野犬の存在に戦慄しつつ、中盤でこれらの監視映像が監視モニターを見つめる男の背中へと連絡される時、ごく日常的な光景が現代では当たり前にカメラによって切り取られているパノプティコン的な世界であることを再確認せずにはいられない。ファロッキの試みを引き継ぎつつも、ファロッキが管理社会そのものに何らの意味を持たせず、視覚そのものを疑う眼差しを手にしていたのに対して、ストラトマンは寧ろ積極的に監視=客観視としてのカメラを用いるという意味で、カメラの視線そのものがモンスターと化すように操作している感触がある。
事実、最後に赤外線カメラだけが地の果てまで追い続ける脱獄犯らしき男(ランニングマン)を捉えた画面の凶暴性を見よ!
人間の眼差しの拡張としてのカメラの使用法として、映画の倫理を揺るがす挑戦を仕掛けている。
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