ルサチマ

女課長の生下着 あなたを絞りたいのルサチマのレビュー・感想・評価

4.5
監督作とは違うが、井川作品でこんなにもあっけらかんと風通しのいい映画は珍しい気もするものの、最後の「イッツアラーイブ」の一言が空間に放たれる浮遊感に井川さんらしさを存分に感じつつ、揺れまくる移動撮影での自転車のカットにグッときた。
鎮西さんの一切内面性を持たせないヒロインの女課長に対する演出も大いに関係してるだろうが、それ故に「シミ」と「ニオイ」という二項対立の関係とその捩れがくっきりと図示され、それによってその二つの派閥が次第に融解し合う様がユーモラスに感じられる。
もう一つ気になるのは、冒頭で女課長が助けた青年との最初の濡れ場で、突如青空のインサートが挿入されるのだが、このとき窓にはカーテンが閉まっていることが次のカットで明示されていたこと。つまり、本来あの青空は誰の目線からも見ることはできないわけで、ではあの青空は誰の眼差しによるものなのか。
ひょっとしたらその後全く姿を映画内に見せない青年は死者で、死者として幽体離脱したことで直視できた青空なのだろうか?
この映画のラスト、死者に取り憑かれた「ニオイ」派の男が女課長の残した「シミ」のついた下着を顔に寄せて「イッツアラーイブ」と呟き、青空にその下着を掲げるとき、イメージの中での死者との性交から回帰したかのような爽やかさがそこにある気がしてならなかった。
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