このレビューはネタバレを含みます
深淵を覗き込む時、深淵もまた、
こちらを覗いている。
鑑賞が終わった後、直感的にこの言葉が出てきました。
主人公は、人を観察して尾行し、住居に侵入する事を趣味にしている変態さんです。
物品盗みをして金を得る事が目的ですが、本質的には居住者の心に土足で入る事が目的になっております。
誰かを観察し、心に影響を及ぼすように行動する支配者的な立ち位置に酔いしれて住居侵入を繰り返している主人公。
これを順応に映像化すると、恐らくは地味で退屈な印象を観客に与えてしまうと思います。
しかし、クリストファー・ノーラン監督の伝家の宝刀「時系列バラバラ」と言う味付けのお陰で、私は映像に釘付けになります。
急に人が変わったり、脈絡の無いシーンが挿し込まれたり、急激に変化する映像に付いて行く事に必死に。
そして、観客の関心が物語の理解に向かった所でストーリーのどんでん返し。
一見地味で意味の無さそうだった映像が、演出力で時間の経過と共に極上の映像に化けていく。
あの息を呑む瞬間を体験させてくれる。鬼才たる原点を大いに体感できました。
クリストファー・ノーラン最高!
クリストファー・ノーラン最高!