80年代の九龍城砦が舞台。黒社会の権力争いから過去の因縁と各世代の友情まで色濃く描かれていて、感情揺さぶられまくった。混沌とした世の中で生きる人々の義理と人情に泣けました。
評判が良く、アクションだけでなく友情も見応えあると聴いて観に行きましたがこれはド肝抜かれた…。アクションから各キャラクターの関係性まで見応えたっぷり。洛軍・信一・四仔・十二少が築く友情と覚悟、兄貴たちの因縁と葛藤と決意、そして世代を超越した固い絆と人間愛に胸が熱くなりました。
洛軍は、元々身寄りがなく偽身分証が目的で密入国して、色々トラブルがあって逃げて九龍城砦に辿り着いたのでただ生きるので精一杯だったと思うんです。家族と関わりもなく育ってきたのもあり、親の愛情も知らないまま成長して生きてきたんですよね。なので、偶然な出会いとはいえ、龍兄貴や信一と出会って人の愛情に触れて自我が芽生えていくのに感慨深くなりましたね。
信一はもう人となりからカッコよすぎる。身体能力が高くナイフもバイクも使いこなす強さと、龍兄貴を支える右腕な存在で頼りがいがあるのと、普段は気さくでさりげなく優しくて時々ふざける愛おしい人間臭さと…。これはもう間違いなく惚れますね。戦うときに常に龍兄貴の支えになろうと動くところも、仲間想いで責任強いところも好き。龍兄貴から託されて進化する姿はボルテージMAX。
四仔、力強くて医者という一面ももつ強力な存在でした。強面に見えるけど、実は誰よりも仁義に熱くて優しさの塊。このギャップにやられましたね。肉体戦はハチャメチャに強くてボコボコに殺るけど、心が広くて思っている以上に繊細な面もあって。普段は仮面を付けてるのですが、終盤の戦いで仮面を外すんですよね。めっちゃかっこよくてびっくりしました。
十二少は終始可愛くていい人。自称坊ちゃんだけど偉そうじゃなくてピュア。龍兄貴や虎兄貴を常に慕っているのも、洛軍たちに対して真っ直ぐで情に厚いのも愛くるしい。だけど、虎兄貴の手下ということもあり、ちゃんと強いんですよね。武闘派で刀を使って闘うところがかっこいい。ちなみに、洛軍と人生の境遇がわりと似通っていて、義理と人情をより大事にしている立ち位置なのも良いですね。
ここまで若者4人の魅力を語りましたが、なんといっても凄まじく人となりから生き方までかっこいいのが龍兄貴なんですよね。人情と権力と欲望が混沌とした九龍城砦を大事に守ってきたリーダーであり、殺人王の名を轟かせた陳占に打ち勝つほど戦闘能力も圧倒的に高い。黒社会に怯えながら生きる人々の平和を守るために、人情味は持ちながらも砦の秩序は忘れない。これはもう、芯が強く貫禄のある兄貴にみんなついていきたくなりますよね。兄貴の因縁や死闘に熱さと儚さでいっぱいになりました。
この映画の魅力はアクション・美術・物語・キャラクター全て隙がないこと。鮮やかでありながら泥臭い世界観と超人ばりのアクションとそれぞれ人生で何かしら抱えてるキャラクターの構成の凄まじさよ…。九龍城砦の廃れながらも風情のある雰囲気と建物の造りに魅了されますし、人々の賑わいや息苦しさが伝わってくるのも胸に来ますね。そこで、覚悟を持った若者から兄貴分の繋がりと死闘が繰り広げられるのがまたいいんですよね。
悪役がめちゃくちゃ強いのも良き。王九は序盤わりとすぐにやられるかと思いきや…めちゃくちゃ強いんかい。しかもチートを使ってやがる…!王九は闘う際にある技を使うんですが、これがずる賢くも誰にも適わないものでして。彼はそう簡単に殺られないし容赦ないので、本当に勝てるのか?とドキドキヒヤヒヤしながら終盤の闘いを観てました。性格は憎たらしいし、どんな手を使ってでも九龍城砦を狙って闘ってくるのでとんでもないですよ。でも悪役はこれくらいが潔く見える。
今年ベスト級の胸熱友情&人間愛が詰まった死闘と仁義の物語でした。今作は日本で活躍されているアクション監督の谷垣健治さん、音楽家の川井憲次さんが携わっています。谷垣さんのアクションは緩急と躍動感がありキャラクターの個性も伝わってきましたし、川井さんの音楽は九龍城砦の眩さと影と人情味を感じました。