KnightsofOdessa

風のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

(1928年製作の映画)
4.5
[精神をすり減らす冬の狂風] 90点

"風"という題名だけあって首がもげて飛んでいきそうなくらいの暴風が吹き荒れる。そして、プレーリーからやって来た純朴な少女はこの狂風に精神をすり減らしていく。『東への道』でも豪雪の夜に家を飛び出していたが、本作品では砂埃の異常な立ち方から風が異常に乾いているような印象があり、視覚的な不快感というか落ち着かなさは格段に増している。純朴であるがゆえに従兄弟の家を追い出され、孤立無援の戦いは望まぬ結婚という形で第二ラウンドへ突入し、音のない世界で風とイライラする旦那の足音が聴こえるような地獄のような悍ましい時間が訪れる。

本当の恐怖は一人取り残されてしまった最後の20分だ。凄まじい勢いで入ってくる隙間風によって揺れる天井灯、器は吹き飛び、ランタンは倒れ、砂埃が充満する。夜中に現れた、かつて自分を弄んだ男は怪物のようにも見え、彼の登場が精神異常を加速させる。風が砂を少しずつ運び去っていく絶望感は何物にも代えがたい。メロドラマで終結させるのは時代を感じるが、リリアン・ギッシュの狂人演技はグリフィス時代の純朴少女以上に様になっていた。素晴らしい。
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