風の作品情報・感想・評価

「風」に投稿された感想・評価

はぎの

はぎのの感想・評価

5.0
今まで観たサイレント映画の中でも一線を画していた。最高の演出、最高の演技、最高のリリアン・ギッシュ。100億点。

風、風、風。
テキサス州を風が襲う。
冒頭の窓を叩きつける風から、吹き荒ぶ砂嵐、どす黒い竜巻、あらゆる風が色を変えてレティを恐怖へと陥れる。

レティはヴァージニアを出てひとりテキサス州に住む従兄の家にやってきた。しかしいじわる妻のコーラに嫌われ追いやられ、行く当てもないから仕方なく結婚することになるものの、お相手のカウボーイのライジを愛せない。さらには猛烈な風にも精神を痛みつけられ、やがて伝説の馬の幻影を見てしまうが...。

風はレティの恐怖そのもの。

彼女の精神状態に呼応するかのように吹き止まない風は常にザワザワと音を立てている。

テキサス州で嵐を呼ぶと言われている白い幻影の馬。嵐とは正反対に空を駆ける馬はなんとも美しい映像。

レティとライジの距離を表現する足の演出や、埋めても埋めても埋まらない、死体がどんどん浮き出てくる演出、それを見ている窓越しのリリアンの目、コーヒーを捨てるところも好きだしほかにも色々...書ききれないほど細かい部分まで印象的な演出が際立っている。

たった80分ほどだけどそのなかで髪型や服装も多種多様、ダンスをしたり、したり顔になったり、あの恐怖の目、色んなリリアン・ギッシュが1本に詰まっててリリアンの主演のなかでも演技は一番だったと思う。散り行く花のクローゼットのシーンも凄かったけど、明らかに演技力が向上しているのが垣間見えた。

やばい。
やばいよね。違う惑星の映画を見た気分。その惑星では馬は天を駆ける。今まで見たリリアンギッシュで一番かもしれない。
シェストレム晩年の傑作メロドラマ。

猛威をふるって吹き荒れる風(強弱はあっても毎日台風が直撃している状態)と砂が、容赦なく孤独と不安に押しつぶされそうな主人公の精神を崩壊寸前まで追い込んでいく徹底的な演出は、素晴らしいを通り越して怖い(リリアンの怯える顔だけ見ていたらホラーにしか見えません)。
この大掛かりな演出の中(最初から最後までぶっ通し。家屋の床下にはハリケーンの際、非難するための防空壕のようなものまである)にも、拳銃、二人の靴の動き、馬の解体作業、、重なる皿など…の小道具を使った暗喩表現は時にコミカルに時にシリアスに時にシニカルに…不安定な主人公の心の機微等を見事に表現しています。
当時物議を醸したラストシーンも、原作通りの暗雲低迷な結末より結果論でしかありませんが現代の私たちから見れば、逆にそれまでの演出がより一層強調されて美しさすら感じるワンシーンに仕上がっています。

年齢(公開当時すでに35歳)、サイレントからトーキーへの変革期(前年1927に「ジャズ・シンガー」公開)、スタジオ・システムの隆盛期(本作もリリアン本人が小説を読んで映画化を切望したことから始まる。作品に対してこだわりを持つ監督や俳優はやりづらくなる)など、様々な理由が重なり本作はリリアンにとって曰く付きの作品となってしまったらしい。
ハッピーエンドで幕を閉じる本作ですが、実際には逆らうことが出来ないハリウッドの強烈な砂嵐がリリアンに襲い掛かり、原作のような末路へと導かれてしまいます…
皮肉なものですね(1912年のデビューから16年間連続で公開されていた新作公開が本作公開の1928年で一旦途切れ、それから数年間何本かに出演し、一時期10年近く銀幕から遠ざかっています)。

日本では未ソフト化なのでupするのをためらっていたのですが、先日始めた#タグのために挙げちゃいました(笑)
私が観たのは3年前ですが、昨年も単館で公開されたようです。

☆★☆リリアン・ギッシュ☆★☆(*´з`)(*´з`)
サイレントなのに風の音が聞こえるように錯覚する。
演出の極北。
優れたディザスター・フィルムは精神の変容を描く優れた恐怖映画に直結する、という最良の例だと思う。ホラー好きは絶対に見ておいた方がいい名作ですが、何と!現在国内絶賛未ソフト化!

「外的環境に対する人間の知覚とその反応」という映画における運動の基本があるけれども、本作はその環境を「暴風がひっきりなしに吹き荒れる大地」という極限値に設定することで渦中にいる人間の反応のボルテージを限界点まで跳ね上げ、その環境に適応できない「よそ者」のヒロインを恐慌に陥れる。生き物のようにのたうちまわる砂嵐が白馬に形象化してリリアン・ギッシュの顔を恐怖に凍りつかせ、知覚の飽和状態に陥った彼女に深刻な眩暈をおこさせるくだりや、クライマックスで起こるある衝撃的な出来事のはずみで、ずれていた皿がカチリと合わさるショットには震え上がった。怖い!

「扉をはさんだアクションによって示される男の妄執と女の恐怖」というモチーフがヴィクトル・シェストレムの映画にはよく描かれるけれども、スタンリー・キューブリック『シャイニング』を改めて見ると、シェストレムの作品がどれだけ影響を与えているのかがよく分かって面白い。例えば、『霊魂の不滅』で妻が閉じこもる部屋の扉を斧を使ってカチ割るシェストレムはご存知のとおり『シャイニング』のジャック・ニコルソンに、同じく『風』で扉をこじ開けようとする男の手を見て恐怖のあまりパニック状態になるリリアン・ギッシュは、同作のシェリー・デュヴァルに引き継がれている、といった具合。
ほの

ほのの感想・評価

4.8
これから強い風が吹く度にこの映画を思い出すんじゃないかっていうくらい強烈に印象に残った。繰り返し映る砂嵐、顔色がどんどん悪くなる(白黒だけどそう感じた)主人公を見ているうちに自分も狂いそうだった。だからもう一回見たいとは思わないがそれでも傑作。
原作と変えたという結末は若干安易にも感じるが、そんなことは大したことじゃないと思える。最後のシーンにタイタニックを連想したのは私だけだろうか。
こんな、ものすごい風が吹く映画ございません。狂ってる。
人生ベスト。